テクニカルノート

シートラマン顕微鏡: 高速顕微分光イメージング技術

2019年 06月17日

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図1:光シート型ラマン顕微分光(LiShMS)の配置図
GM:XY軸ガルボミラー / EO:励起用対物レンズ / CO:集光用対物レンズ /
  SL:走査レンズ / TL:チューブレンズ / TF:波長可変フィルタ

ラマン分光は、材料や細胞、組織に関する化学組成情報を収集するための手法である。ラマン過程は、試料に含まれる分子の振動に伴う励起光の散乱によってもたらされ、生物化学的成分を豊富に含んだ試料から分子固有の振動状態に関するコントラスト像をラベルフリー(蛍光標識不要)で観察することができる。このように、試料に適合する分子の分布状態に関する2次元情報を取得することができるのは、生物医科学の分野にとって非常に魅力的なことである。しかし、ラマン散乱過程における効率は極めて低く、それゆえ、単一2次元画像を取得するのに時間(数分から数時間)がかかる。このため、ラマンイメージングによるin vivo(生体内)研究や容量分析による情報の取得は、実質上、不可能だ。本アプリケーションノートでは、干渉計チューナブルフィルタ及びCobolt製小型MLD 638nmレーザーを用いたデジタルスキャン光シート顕微鏡(DSLM)をベースにした高速2次元ラマンイメージング法[1]に対するアプローチ(近刊)について紹介する。

分光器を使用しないラマンイメージング
デジタルスキャン光シート顕微鏡(DSLM)システムは、ラマン過程でデジタルスキャンされた光の平面(図1参照)を用いて試料の単一平面を励起するというものである。顕微鏡に取り付けられた集光用のアーム部を介したCMOSカメラで、ラマン画像として生成された2次元情報を撮像する。システムを全く修正しないと、このようなシステムは、各画素が統合されたラマン情報をスペクトル分解能をもたずに反映する画像を記録してしまう。ラマン情報をスペクトル分解するためには、干渉計チューナブルフィルタ(TF)を用いる。チューナブルフィルタの角度方向を変えることで、鋭いピーク特性をもつ波長の遷移を連続的にシフトすることができる。

図2:光シート型ラマン顕微分光(LiShMS)によるイメージング。
Cobolt製638nmレーザー(出力:20mW)を用いて、異なる種類の有機溶媒中で解析を行った。
a)ナイフエッジ式プロファイラによるスキャン方法でのスペクトルの計測
b)微分処理を行った後のラマンスペクトル
c)共焦点顕微ラマン分光システムでの測定で得た上記と同じ種類の有機溶媒中におけるラマンスペクトル
※ Rocha-Mendozaほか著 Biomedical Optics Express第6巻9号 3449-3461頁(2015)より転載

これにより、チューナブルフィルタの角度の位置を変える際に、分子振動を示すラマンバンドの強度分布を画素ごとで記録することができる(図1及び図2a参照)その後、ラマンスペクトルを回復するために、簡単な微分演算を画像に適用する(図2b参照)。この手順は、画像全体に対して画素ごとに行われるので、被照射面に対するスペクトル的に分解された3次元ラマンマッピングが可能となり、得られるラマンスペクトルは共焦点顕微ラマン分光システムでの測定で得られるスペクトルとよく一致している(図2c参照)。

高速3Dハイパースペクトルラマン画像の取得
C-H伸縮モードのピークが現れる領域にて、寒天に浸漬させたポリスチレンビーズ(PS)と脂肪滴(LF)のラマンスペクトルを分解するためにCobolt製の小型CWレーザー(638nm)を用いて、固体試料を3次元画像化するための技術を実現する可能性を明らかにした(図3とその説明を参照)。さらに、線虫C.elegansを使って、生きたままの生物試料を研究するための技術を用いる可能性をも示された(図4)。このような全ての3Dラマン情報(300 × 300 × 180μm3)を抽出するのに要した時間が約5分であったことは言及に値する。

図3:線虫C.elegansの光シート型3次元ラマン顕微分光
a) ラマンバンドをマーカーとして同定するのに用いられる標準試料ポリスチレン(PS)ビーズの明視野像
b) 同じくポリスチレン(PS)ビーズの統合ラマン画像
c) 2910cm-1においてスペクトル分解したC.elegansのラマン画像(3次元直交座標系で表示)
d) 2960cm-1においてスペクトル分解したC.elegansのラマン画像(3次元直交座標系で表示)縮尺:100μm
※ Rocha-Mendozaほか著 Biomedical Optics Express
第6巻9号 3449-3461頁(2015)からの引用

おわりに
小型のCobolt製レーザーを用いた光シート手法により、試料のC-H伸縮モードのピークが現れる領域にてスペクトル分解された高速2次元及び3次元ラマンイメージングを行った。本レーザーの画像取得の速度は、共焦点顕微ラマン分光システムの速度よりも最大4倍となる[1]

参考文献
1. I Rocha-Mendoza, J. Licea-Rodrig uez, M. Marro,O.E. Olarte, M. Plata-Sanchez, P. Loza-Alvarez
『CWレーザーと波長可変フィルタを用いた光シート型自発ラマン顕微鏡』Biom edical Optics Express誌
第6巻9号 3449-3461頁(2015)

Israel Rocha-Mendoza1,2, Jacob Licea-Rodriguez1,3, Monica Marro1, Omar E.Olarte1,4, Emilio J.Gualda1, and,
Pablo Loza-Alvarez1*

1 ICFO-Institut de Ciencies Fotoniques,The Barcelona Institute of Science andTechnology, Spain
2 CICESE;
3 Cátedras CONACYT-CICESE, Ensenada, México;
4 Universidad ECCI, Bogotá, Colombia

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