テクニカルノート

発振モードとレーザーの安定化

2020年 07月22日

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偏光されているレーザー筐体に貼られているラベルが、出射ビームの偏光面(偏波面)あるいは偏光方向を示します。ランダム偏光の He-Neレーザーでは、偏波面を考慮して45度でセットされている偏光子が、モードスイープを考慮して直線偏光レーザーと同様の出力を産み出しますが、理想的な偏光子を用いても、出力は半分にカットされます。

シャッター表示ラベルの中央が直線偏光レーザーの偏波面を示す。

では若干の実際の数値で説明しましょう。赤色(632.8 nm) He-Neレーザーのネオンによるドップラー効果で広げられたゲインカーブは、1.5 GHzあるいは1.6 GHzのオーダーでの半値幅(ゲインがピーク値の少なくとも半分である FWHM)を持ちます。そのため、(前節での描写の通り)およそ300 MHz のモード間隔を持つ500 mm長(高ゲイン)チューブでは、5本か6本の縦モードラインが同時に活性化しており、発振は常に維持されます(ただし、さまざまなモードが通過して互いに競合するため、出力に若干の変動が見られます。) ただし、小さい10 cmチューブでは、モード間隔は約1,500 MHzとなります。もしこのレーザーが本当に不運である(すなわちミラー間の距離が本当に間違っているなど)と、キャビティ共鳴は十分なゲインを持つゲインカーブの一部とはならず、発振さえしないでしょう! もしくは、チューブが温かくなって膨張すると、レーザーは点いたり消えたりするでしょう。短絡してしまう商用の He-Neレーザーチューブはめったにありません。 単一のガス構成よりもむしろネオン同位体の混合(Ne20 と Ne22)を使用し、それらのピークゲインの場所が少し異なることから、ゲインカーブをある程度広げることも可能です。この混合ガスの使用によって、より小さいキャビティが確実に発振することを可能にしたり、すべてのサイズのHe-Neレーザーでモードスイープから振幅バリエーションを減らしたりすることができます。実際の発振の閾値は、発振が起こるネオンゲインカーブの有効な幅も決定し、その幅は FWHM より広くなることもあります。

縦モードが持つドップラー幅 (AnfoWorld HPより) http://www.anfoworld.com/lasers.html

高速のシリコンフォトダイオードとオシロスコープあるいは RF スペクトルアナライザを使用すると、He-Neレーザーの縦モードに関連する周波数を知ることができます。最も明確なデモンストレーションは、短いチューブを使って2本ほどの縦モードが活動的な場合でしょう。 両方のモードが発振しているとき、これは一つの差周波数をもたらします。フォトダイオードは直交する偏光モードでは差周波数を検出しないため、両方のモードを同じ偏光方向とする直線偏光チューブが最良でしょう。ランダム偏光のチューブ内で隣接する縦モードはほとんど常に直交して偏光されます(少なくとも633 nm He-Ne では)。けれども、偏光軸に45度の偏光子を加えると、信号強度にわずかな喪失はあるものの、このモード直交を補償することができます。偏光子が無いと、ランダム偏光レーザーのビート周波数はモード間隔の2倍の倍数となる傾向があります。なぜなら、同じ偏光方向のモードだけがフォトダイオード内で互いに共鳴するからです。(もし非常に正確に計測できれば、これらの周波数が一般に、c / 2L に基づいて正確にモード間隔の倍数とはならず、モードスイープの間にわずかに変化することが分かるでしょう。 この現象はモード同士で引いたり押したりする影響(モードプリング作用)のためであり、上級コースに取っておきましょう!)

2モード安定化単一波長HeNeレーザー

(392) 受動的な安定化(熱膨張率が非常に低いまたは実質ゼロの物質と温度調整器の組み合わせによる構造を使用)あるいは能動的な安定化(光出力フィードバックとピエゾ結晶あるいは磁気アクチュエータを使用してミラーを動かすか、あるいは加熱エレメントを使用してキャビティ構造全体の長さをコントロール)によってこれらの影響を補償することができます。ただし、追加の出費が許されるのは干渉計ベースの精密測定システムなどの高性能なラボ品質レーザーや産業用アプリケーションのみであり、こうした(安定化)強化策をバーコードスキャナーなどで使用される普通の安い HeNeチューブでは決して目にすることは無いでしょう。

(394) このように、典型的な HeNe レーザーは単色ではありませんが、有効な発振線幅がよくある他の光源と比較しても非常に細くなっています。単一縦モードで稼働する本当に単色の光源を産み出すためには、さらなる努力が必要とされます。このための1つの方法は、キャビティ内のビームパスにもう1つのエタロンと呼ばれる調節可能な共振器を設置することです。典型的なエタロンは、平行した面を持つ透明な光学式プレートで構成されています。その2つの表面からの部分的な反射が、それ自身の1組のモードによる弱いファブリィ – ペロー共振器として機能させることになります。そのため、両方の共振器(レーザー本体とエタロン)で同じ光周波数を持つモードだけがレーザー出力を維持するのに十分なゲインを生み出します。

(400) オプションのキャビティ内エタロンを持つ縦モード構造は次のように見えるでしょう(一定の比率表示ではありません):

縦モードの模式図
エタロンの構造(東大物性研資料より) https://slidesplayer.net/slide/11452946/

エタロンの2つの面の間隔がメインミラー間の間隔よりはるかに短いため、ピーク同士(レーザー本体のピークとエタロンのピーク)の位置がずっと離れている(図示以上である)ことに留意してください。 (エタロンの屈折率もここでは関係しますが、それは微々たることです。) エタロンの角度を調整することによって、そのピークが左や右にシフトします(エタロンの2つの面の間の有効距離が変化するため)。そのため、1つの発振線が選択されてメインのゲイン機能でのピークと同時に起こるようになります。こうして単一モード動作が得られます。 (405) エタロンのサイドピーク(-1、+1やさらに外側)は上に示されたメインゲイン機能で弱いピークと同時に起こることもありますが、それらを統合した強度(結果)はレーザー出力に寄与するには不十分です。

単一縦モードHe-Neレーザーでの発振線選択のためのキャビティ内エタロン(発振線1本のみを選択)

(408) この例は、発振における縦モードの節の図と同じ30 mWのレーザーに基づいています。 キャビティの中にエタロンを加えることは、すべてのGHzでのピークで付加的な喪失効果を招くこととなります。 (このようなエタロンは長さが約15 cmほどにもなり、搭載しているレーザーのチューブが両ミラーの間にそのスペースを許容するだけの長さを持つ必要があることに留意してください。ただ、これは些末なことに過ぎません!) もともとの正味の(往復の)ゲインとエタロン伝送の結果がそれを上回る場所でのみ、レーザーが発振します。この例としては、キャビティモードとエタロンモードが一致する所でのみ、つまりネオンゲインカーブのピークの中心からわずかに左寄りの位置で(上図のネオンゲインカーブの頂上と発振モードの位置関係を参照)です。こうして単一モード発振だけが存在することとなり、複数の各モードでの3 mW未満の発振ではなく、15 mW超1本のみの出力を示すでしょう(上記のランダム偏光30mW 出力HeNe レーザーの縦モードの図を参照)。エタロンを付加すると常に若干の損失が発生し、そのため、もともとの30mW超の出力は通常不可能となり、出力の50パーセントの減少がここで示されていますが、これはちょっと減りすぎのケースかもしれません。(引用元:ハービー・リュット教授 (h.rutt@ecs.soton.ac.uk).)

通常標準的な、小さい He-Neレーザーはたった1つのエネルギー遷移である約632.8 nmとしてよく知られている赤色の線で発振します。He-Ne ゲインカーブは(632.8 nmでは)およそ1.5 GHzのゲインバンド幅で非同質にドップラー拡張されます。 (ドップラー効果で広げられたゲインカーブの幅は発振波長に依存します。 3,391 nmでは、ほんの310MHz となります。)

632.8nm 3mWランダム偏光HeNeレーザーの縦モード(半値幅:1.5GHz)
1,523nm 1mWランダム偏光HeNeレーザーの縦モード(半値幅:675MHz)

(420) 典型的なレーザー、例えば30 cm長のレーザーでは、軸モード(縦モード)は約500 MHz毎に分離されます。通常、2本か3本の軸モード(縦モード)が閾値を越え、実際、レーザーの共振器長が伸びるにつれて、2本のモード(エンベロープの中心線を挟んで対称的に存在する)か3本のモード(1本は中心線の近くで他の2本が両側)が繰り返し現れ、ゆっくりとした周期的な出力変動が結果として生じます。 より短いレーザーでは、モードの本数はさらに減り、安定化しない限り出力変動がさらに大きくなります。 しかし、10本のモードを得るには長い筐体のHe-Neレーザーが必要となり、それらのモードが互いに近接して1.5 GHzの線幅上にただ広がることになります。

632.8nm 30mWランダム偏光HeNeレーザーの縦モード(半値幅:1.5GHz)

ブリュースターウィンドウや内部ブリュースター板を持たないほとんどの He-Neレーザーはランダム偏光となり、隣接するモードは交互に直交偏光となる傾向があります。 (留意すべき点は、この現象は632.8 nm以外の波長で稼働するHe-Neレーザーについては必ずしも当てはまらず、2つ下の図のように磁界で覆う場合もあります。)

一部の周波数安定化HeNeレーザーは単一縦モードではなく2本のモードを持ち、安定化はそれら2本のモードを線幅の中心線から対称に保つように働きます。つまり、両方とも線幅の中心線から半分のモード間隔を持つことになります。それから偏光子が片方のビームを切り離すか、偏光ビームスプリッターが2本を分離します。
(引用元:Sam Goldwasser)

2モード安定化単一波長HeNeレーザー

(429) マルチモード発振線とは、He-Neレーザーの隣接するモードが直交偏光するであろうということです。 ただし、短い(例えば5、6インチ:12.7-15.6cm)ランダム偏光のチューブのサンプルが2本の能動的なモードを保持しているのに、上記に当てはまらない状況を見たことがあります。それらはウォームアップで1本の安定した偏光ビームを発生し、この自然な偏光に常に強い磁界が掛けられているのです。 だから、それは強い影響とは言えません。 チューブ内のすべてが適度に対称である場合にのみ、モードは交互直交するでしょう。複数のモードがゲインカーブの一部を通っているときは単一の偏光に留まりますが、それから突然に - そして繰り返し- 偏光方向を切り替える場合(モードフリップ現象)もあります。 しかし、大多数のチューブはこの点について正しく振る舞います。

安定化(軸)ゼーマン分離2波長HeNeレーザー
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