テクニカルノート

モードスイープ

2020年 07月07日

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モードの位置は、ミラーの物理的な間隔によって決定されるため、チューブが温かくなって拡張するにつれて、これらの発振線周波数は下方へ(より長い波長に向かって)移動します。 (324)  ただし、波長の関数としてのミラー反射率が非常に広い場合、新しい発振線が上(波長の短い側、図の左側)から補充され、関数の全体的な形は変化しません。

上の図で、一つの任意のモード位置が表示されていますが、正常に機能するレーザーでは、レーザーが温まるにつれて、発振線は順調にゲインカーブを通過していきます。この動きは「モードスイープ」や「モードサイクリング」などの様々な名前で呼ばれています。(327) ほとんどのレーザーで見られますが、この効果(モードスイープ)は比較的狭いネオンゲイン幅のため低から中程度の出力 のHe-Neレーザーにおいて非常に顕著であり(低から中出力 He-Neレーザーではほんの数本の縦モードしか持たないため)、どちらかというと偶然の事象として、少なくとも赤い(633 nm)の He-Neレーザーにとっては、隣接した縦モードは直交して偏光される傾向があり、物理学が主として支援するいくつかの点でほぼ理想的な振る舞いを見せます。 (マーフィーは「レーザー危険」というサインを見て、近寄ることはしません!)この後すべてでよりあてはまるでしょう。(多分マーフィーを除いて)。

8ミリワット超のレーザーのすてきな図を見ると、5本の縦キャビティモードがあり、発振の閾値(ただ右端のモードはごくわずかですが)を超えるゲインを見せています。この特定の例では、これらは発振モード(赤色と青色の線)として8 mWをいくぶん上まわる全体出力を生み出します。 30 mWのレーザーでは、2倍の数でモード間隔が半分の発振モードがあり、それぞれのモードがより高い出力を持ちます。 興味深いことに、いわゆる「ランダム偏光の」赤色(632.8 nm) He-Neレーザー内で隣接するモードはほとんど常に直交して偏光を受け、チューブに対して偏光軸が固定されます。 (ここでは、片方を恣意的に0度とみなし、詳しくは後ほど説明します。) ミラー間の距離が長くなると、それぞれのモードの実際の出力が少しだけ増加し、発振モードの数も増加します。

8mWランダム偏光の He-Neレーザーのモードスイープ(エンベロープ内を図の右方向に移動)

(338) 1つの完全なモードサイクル(赤色でも青色でも)は、1つの波長(633 nmでの)のキャビティ長の変化と、c / 2L のモード間隔の2倍の光周波数の変化を表します。 赤色(633 nm)HeNe の隣接するモードが直交して偏光されるため、2つの付加的な要因が生じます。 この事象は、他のほとんどのレーザーや、たとえHeNe レーザーでも、他の波長では必ずしも当てはまりません。 注意を払うべきは、モードスイープのプロファイルがネオンゲインカーブの影響を受ける一方で、そのスイープ時間はネオンゲインカーブに直接は関係せず、ただc / 2L だけに関係するということです。

ただし、さらに留意すべきは、HeNe レーザー(の筐体)が長くなるにつれて、モード競合がますます不安定となり、そのため、Spectra-Physics社製 127 (39インチ長キャビティ)が見せるきれいに整った(モードの)行進を期待できないということです。実際、モードのエンベロープが一般にゲインカーブに従う一方で、それぞれのモードは準混沌のダンスとして上下動するでしょう! 7~10 mW出力の633 nmの HeNe レーザーの縦モードを見る際、不安定さが走査型ファブリーペロー干渉計(SFPI)のディスプレイに現われることがあります。5 mW レーザーは通常非常にきれいですが、35 mW レーザーでは、ひどい状態のものがあり得ます。

走査型ファブリーペロー干渉計(SFPI)でのメレスグリオ社製05LHR151の縦モード(モードが上下に伸縮する)

(346) 非常に短い HeNeチューブでは、ゲインカーブの幅はモードのの間隔と同等か、さらに短いことがあります。 そうしたチューブでは、出力は非常に低くなるか、モードスイープ中にゼロとなることがあります。最大出力が非常に低くなるであろうと予想されるため、この問題が起こるキャビティ長で生産される HeNe レーザーはほとんど生産されませんでした。私が知っている唯一の製品は、100 mmのキャビティ長(1.5 GHzのモード間隔)を有すSpectra-Physics 119安定化レーザーです。この非常に短いキャビティは、このシステムに特別な特性を提供するために必要とされました。

実際、偏光モードスイープをプロットすることによって特定の製造業者やHeNe レーザーチューブの型式までも識別することも可能で、これはレーザーモデルごとに一種の「指紋」を提供することを意味します。例えば、 Zygo やTeletrac/Axsys 社製安定化レーザーにインストールされているタイプのチューブは、筐体から取り出さなくとも識別可能です!(352)

He-Neレーザーモードスイープ指紋

これらのチューブはすべて物理的には同様ですが、劇的に異なるモードスイーププロットを持っています。 そして、このモードスイープを新しいヘッドのそれと比較することによって、レーザーチューブの健全性に関する重要な情報を確定することも可能です。 チューブ寿命の大部分に亘って全体的形状は同じままですが、出力が低下するにつれて減少しているプロットの全体の高さの変化に加え、全体と比較した場合の変異の振幅(すなわちAC要素)は増加するでしょう。 ただ、チューブ寿命の末期に近づくと、出力は非常に低下し、ほんの数モードしか発振しなくなるため、違いの識別は難しくなってきます。

上記の例での30 mW出力のような多くの縦モードがある非常に長いチューブでは、モードスイープの実際の外観はランダムダンスによるモード間の出力変動としてどちらかと言うと混沌としたものとなるでしょう。 私がメレスグリオ社製 05-LHP-928 (定格35 mW出力) He-Neレーザー が40 mW以上を出力するという状態で最初にこの振る舞いを観察したとき、そのレーザーが高い出力にもかかわらず何らかの点で欠陥があるかもしれないと思いました。 けれども2つの他の健全なサンプルが同様の振る舞いを見せました。 ですので、これらの高出力のレーザーですてきなお行儀の良い行進をするモードを見ることは期待できません。微妙ではありますがより短いチューブでもしばしば不安定のきざしが見られ、それは ゲインカーブや電源のリップルノイズの下での標準的な動作のような他の原因に起因しないピーク振幅での数パーセントの変化です。

(364) モードスイープの影響は短い低圧の二酸化炭素(CO2)レーザーでいっそう劇的となる理由は、一定の共振器長では、波長の比率(He-Ne の基本波長632.8 nmと比較してCO2では基本波長10,600 nmとなる)から、縦モード間隔が16.7倍(10,600/632.8)の長さとなるからです。これらの場合には、筐体が温かくなるにつれてミラー間の距離が熱膨張のために増加し、レーザー出力が出たり止まったりします。 632.8 nmのHe-Neでこの現象が起きるためには、チューブの長さが約75 mm(3インチ)未満である必要があります。
直線偏光He-Neレーザーは同じ縦モード間隔を持ちますが、すべての発振モードは上の図とアニメーションで見られるように、同じ偏光方向(赤あるいは青)となります。

典型的な直線偏光8 mW出力 He-Neレーザーの縦モード

そのため、赤/ 青色盲(もしそんなものがあるとして)を持っている人には、これまでの図がすべて直線偏光のように見えてしまうでしょう!

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