テクニカルノート

STED 顕微鏡法 - ノーベル賞受賞技術

2021年 05月14日

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要約: STED 顕微鏡法が超解像イメージングを可能とし、 回折限界を数桁も下回る10nm未満のタンパク質の構造とウイルスを確認できるようになりました。
Laser Quantum社の opus660レーザーがこのイメージング技術に理想的であることが分かり高出力の660nmビームでこれらの高解像度画像の達成に必要なSTED非励起を生み出すことが可能となります。

導入

STED顕微鏡法は科学の多くの分野で重要な役割を果たしており、その中には遠視野顕微鏡法が最もよく使われる生物学的標本の研究も含まれます。
この理由は、分子レベルでの蛍光標識の高い特定性および焦点が合っている光の非侵襲性故です。
顕微鏡法で最も重要な要素は画像解像度すなわち近くに位置する2点を区別する能力です。最近まで、遠視野光学顕微法が限られた解像度と200nmまでの物理サイズしかなくその原因は使用する可視放射の回折限界でした。多くのウイルス、タンパク質と小さい分子は100nm未満の大きさから容易には研究が進まず、その分野の進歩が妨げられていました。
誘導放出抑制顕微鏡法(あるいは STED 顕微鏡法)は超解像イメージングを提供するプロセス(図1)であり、1994年にHellとWichmannよって開発され、1999年にHellとKlarによって実証されました。 Hellはその開発により2014年ノーベル化学賞を授与されました。

図1:励起スポット(2D、a – 左側)、ドーナツ形状の非励起スポット(b – 中央)と蛍光を示す残余エリア(c – 右側)
Leica Microsystems社の厚意による。

STED 顕微鏡法プロセスは、中央の焦点スポットでは蛍光を発するように活性化を保つと同時に、サンプルの特定の領域での蛍光発光を抑制することで達成されます。このプロセスは従来の共焦点顕微鏡法よりもはるかに高い解像度を達成します。STED 顕微鏡法プロセスは、対象となるサンプルに付加された蛍光体に励起フォトンを当て、自然放出フォトンを発生させます。この入射励起ビームは通常ガウシアン形状を持つように設定され、共焦点機構に組み込まれます。
第2のずっと高強度のレーザービームが異なる波長で加えられ、これらの2つのビームの組み合わせが「不必要な」蛍光発光を抑制してずっと高い解像度の達成に導きます。これまで光学顕微鏡はアッベの回折限界故にサンプルを観察するために用いる光の波長の約半分の解像度に限定されてきました。STED技術を用いることで、これらの限界が取り払われました。

透過型電子顕微鏡法で行うような真空中にサンプルを捧げる必要もなく、今では科学者はナノの世界の中をのぞき込むことができます。これまで、生物学上のサンプルの構造的かつ機能的な関係の詳細な研究は
回折限界のある顕微鏡法ではほとんど不可能でした。
付言すれば、多色の超解像STEDイメージングが生物学と巧みに設計されたナノ構造の間の相互作用を可能とし、生命科学とナノテクノロジーで応用できる詳細な研究となるのです。

STED 顕微鏡法では、Laser Quantum社の ventus 473 やventus 532などのTEM00のレーザーを採用し、回折限界~200nm スポットで焦点を合わせ、典型的な共焦点配置(図1a)にあるサンプル内の蛍光マーカーを励起します。 継続波レーザー光源は励起と STED ビーム間でのパルス長最適化、同期化或いはタイミング調整を必要としません。

第2の、同軸赤色レーザービームが「ドーナツ」を形成し中央の「ホール」(図 1c)以外の領域すべてで蛍光発光(図 1b)を抑制します。Laser Quantum社製opus660は理想的な STED非励起の赤色レーザーであり、660nm光の1.5Wが非常に鮮明な中央ホールを生成します。赤色STEDレーザーの形状をコントロールすることによって、解像度は標準的な光技術を遥かに超えることが可能となり、40nm未満の細部まで視覚化できるようになります。非抑制スポットのサイズは、STED非励起レーザーからの出力が増加するにつれて減少し、Laser Quantum社のopus660 レーザーはこのアプリケーションに理想的と言えるM2値にて、必要とされる(穴)形状に正確にビームの焦点を合わせることができます。

STED 顕微鏡法は細胞生物学と物質科学における種々のトピックにより鮮明な光を当て、ナノスケール試料と細胞の構成要素を蛍光発光ベースの研究でアクセス可能としました。応用として神経終末部と脳シナプスの分析に関する研究を転換しつつあり、ハンチントン病に関係するタンパク質についての研究も発展させ、胎児の細胞分裂を追跡するなど、医学研究に真の恩恵をもたらしています。

図2:共焦点顕微鏡法とSTED法と660nm opus レーザーで達成された解像度の比較。
3色共焦点法とSTED法の画像は、Leica TCS SP8 STED 3X で撮影。Leica Microsystems社の厚意による。
図3: Laser Quantum opus 660.

<参考>

[1] T. Muller, C. Schumann &A. Kraegeoh, STED microscopy and its applications: new insights into cellular processes on the nanoscale (June 4, 2012). Chemphyschem, Vol.13(8)

[2] S. Hell & J. Wichmann, Breaking the diffraction resolution limit by stimulated emission: stimulated-emission-depletion fluorescence microscopy (June 1,1994). Optic Letters, Vol.19(11)

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