テクニカルノート

共振器長とモードホップ

2021年 03月30日

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(436) 入門したてのレーザー熱心党が持つ共通の恐れである「共振器長をnmレベルで安定化させないとレーザーが明滅してしまう」に向けられた若干のコメントがここにあります。

(引用元:Steve Roberts)
炎上を覚悟の上で私が物理学の一部を無視し、私が観察したことに基づいてこの件について説明すると、He-NeレーザーやArイオンレーザーのキャビティを光軸調整することは、それらの修理を行うことの一部と言えます。 教科書だけに従う人はだれもが楽しみを逃してしまい、明らかに外部ミラー共振器に取り組んだことが無いようです。それ(外部ミラー共振器)はなかなかの教育(的経験)となり得ます!

(441) 利得媒体(ゲインメディア)内を通過する可能な通り道(パス)の複素数性故に、ミラーを適切に光軸調整する限り発振が起こります。キャビティ間隔(キャビティ長)はそれほど決定的ではなく、ミラーマウントを調整すると間隔は必ず変化します(角度を変えるだけでも、若干の不可避の変化が常に発生します)。つまり、ミラーを動かしてレーザーがヌル干渉で明滅することは本当にありません。- 代わりに発振モードが変わります。レーザーは別の使用可能な経路を見つけます。この現象をある場合には強度の変化として認識できますが、よりきちんと観察できるのは光スペクトラムアナライザでのモード間のビート(うなり)の変化としてです。最終的に発振が停止してしまうほどにミラーを動かすことはしませんが、これは共振器の拡張ではない光学的な機能です。

半導体レーザーでのエタロンの角度による発振スペクトルの変化(東大物性研資料より)
https://slidesplayer.net/slide/11452946/

(447) 私は3枚目のミラーがHe-Neのような低利得媒質を要する2枚ミラー構成のキャビティに加えられることで心配されることをいくつか経験して来ました。そこでは、3枚目のミラーが加わることで、多くの発生可能なモードを消してしまうのです。通常これが起きるのは、私がHe-Neレーザーでアルゴンレーザーのミラーを光軸調整するときであり、HeNeレーザーは戻り光でチカチカし始めます。(「外部ミラーレーザー洗浄とアラインメント技術」の節を参照。) けれどもレーザーが極めて不安定な共振器設計で無い限り、ミラーの(角度)変更はただモードホップを起こすだけですが、高精度のラボアプリケーションを扱っている場合には、この現象は周波数安定化レーザーやモードロックレーザーにとって重大な問題となります。そうでないと、たいていの商用のレーザーは少なくとも共振器長安定設計ではありませんから。 レーザーが安定した光学設計であるかどうかを決定するための方程式と技術があります。ここで言う安定とは、広範囲に亘る横と縦のモードでの発振を維持することを意味します。例としては、A・E・ SiegmanやKoechnerの文書を参照してください。もしあなたの図書館に同様の書籍が無いようなら、マイクロ波ガイドに関する本を見つけてください。その本が、何が起こっているかを思い描く手助けになるかもしれません。

(456) キャビティ内エタロンか能動的な安定化システムが単一波長システムでは通常使用され、ピエゾ上のミラーの向きを変えるか、小さい電磁石付きのミラーマウントを使用するか、より小さい筐体の場合には内部ミラー型チューブにキャビティ長を変化させるヒーターを使用します。エタロンとは基本的にミラー間の発振経路(パス)内に置かれる高精度平面ガラス板であり、その長さはオーブンで変更することができ、モードフィルターの役割を果たします。

エタロンの構造(東大物性研資料より) https://slidesplayer.net/slide/11452946/
シングルモードHeNeレーザーでの発振線選択用のキャビティ内エタロン

(458) あなたが必要と思っているかもしれない50nmや100nmなどの共振器長安定化はいずれにしてもやりすぎであり、共振器を安定させることだけで安定化を達成することは実際には不可能でしょう。製品の最終用途によっては、そのほとんどのレーザーが黒鉛複合物や不変鋼(インバー)の低膨張共振器で構築されますが、多くの製品では単純なアルミニウムブロックやL字型のアルミニウムを使用し、稀な場合では2つの異なる素材で出来ている棒を使用して、その短い高膨張棒が、主要な膨張の方向と逆の方向にミラーマウントを動かします。1ミリのほんの一部の長さが、より合理的な仕様と言えます。
(引用:Harvey Rutt教授 (h.rutt@ecs.soton.ac.uk).)

(462) 「半波長の整数倍がキャビティ長に一致する周波数においてのみレーザーが稼働する」という基本的な概念は、完全に正しいです。隣接するモード間の分離距離は1/(2*L)であり、Lはcm単位でのキャビティ長を意味します。このことから、私達は「波数」から分離距離を算出できます。ある波数は30GHzなので、通常のヘッドではちょうど30GHz/(2*L)となります。あるいは、さらに簡易化すれば、50cm長のレーザーのモード同士は300MHz(30GHz/100cm)離れることになります。それは光学的にはそれほど離れているわけではありません。

(468) レーザーは若干の分子、ガス、結晶内のイオンなどで稼働し、2つのレベルの間での遷移を発生させています。けれどもそれらのレベルは完全に「鮮明」という訳ではなく、それらが「広げられる、幅を持つ」と言います。その理由はさまざま挙げられます。

縦モードが持つドップラー幅 (AnfoWorld HPより) http://www.anfoworld.com/lasers.html

ガス内-ドップラー (あるいは温度)幅: 分子はランダムに動き回り、光はあるランダムな範囲でドップラーシフトを受けます。

衝突(圧力)幅: 衝突が状態を弛緩したり離調します - つまり、「ごちゃごちゃにして」広げる訳です!

固体内ではさまざまなことが起き得ますが、例えばガラス内では異なるレーザーイオンが少し異なる位置にあり、これはそれらに少し異なるエネルギー量を与えます。

(476) いずれにしても、「完全に」鮮明な遷移は存在せず、遷移が有限の寿命を持っているという事実はそれ自身にある幅を与えることになりますが、これは事実上の限界ではなく、他の何かがより重要となります。

こうした広げるメカニズムは発振線を「ぼかす」こととなり、その周波数「範囲」に亘る光学ゲイン、つまりゲインバンド幅を得ます。

例は二酸化炭素です。「自然な元々の幅」は非常に小さくて、Hzオーダー です。300°K でのドップラー幅は約70MHz です。衝突広がり幅は約7MHz/Torrでの増加を見せるため、10Torrを下まわるとその幅はドップラー制約を受けて~70MHz ほどです。10Torr を越えると圧力広がりで(100Torrで~700MHz)となります。

典型的なHe-Neレーザーの場合、そのゲインバンド幅は1GHzほどに「ぼけ」て、300MHz超のモード間隔を持ち、「常に」2本から3本のモードが「ゲインバンド幅」内で発振することになります。ガラスレーザー(珪酸ガラスにネオジムを添加した媒体を用いる個体レーザー)の場合には、「何千本」ものモードが並びますが、それはガラスのゲイン幅が非常に広いからです。

(484) ところが、逆の方向に向かう場合も「あり」ます。二酸化炭素レーザーの場合、低圧ではドップラー幅を持っても70 MHz程度となり、300MHzというモード間隔よりもずっと「狭く」なります。そのため、短キャビティ二酸化炭素レーザーはキャビティ長が変化すると本当に点滅を起こすため、キャビティ長を「調整」してゲイン幅の中にモードを保つ必要があります。こうしたことは、赤外線発光の短キャビティガスレーザーで主に起こります。760Torr(1気圧)の「高圧」の二酸化炭素レーザーでは線幅は数GHzあり、モード間隔よりはるかに長く、このような現象は起こりません。

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