テクニカルノート

中心波長、HeNeレーザーのスペクトル線幅とコヒーレンス長

2019年 07月26日

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弊社ではしばしばHeNeレーザー中心波長(あるいは波長)、スペクトルの線幅とコヒーレンス長についての質問を受けます。これらの質問に返答することでの主な挑戦としては、「状況次第ですね」ということになります。

周波数と波長パラメータ(そして結果として生じているコヒーレンス長)が製造パラメータ、環境要因とおよびそれらが測定される時間に依存します。例えば、あなたは、数ミリセカンド前後の瞬間的なコヒーレンス長や、何日間にも亘るコヒーレンス長について心配しますか?これらを取り巻いている問題を理解するために、まずレーザーの中心周波数について考慮する必要があります。

積極的な周波数安定化がないHeNeレーザーの中心周波数
レーザーの中心周波数は製造(「ガス注入」)で使用したネオン同位体の混合比率を最も重要な要因とするいくつかの要因によって決定されます。

ネオンには3つの安定した同位体、Ne20、Ne21とNe22があります。自然に豊富に存在するネオンは、およそ90.48%のNe20、0.27%のNe21と9.25%のNe22で構成されています。一部のHeNeレーザーは自然界に豊富に存在するネオンを使いますが、その他の場合には、それぞれの同位体の特別な比率による非常に純粋なネオンを使用します。

なぜ特別な混合を使うのでしょうか?ネオンのそれぞれの同位体毎の、ドップラー効果で広げられたゲインカーブは、周波数がわずかに異なります。従って弊社が最も短い中心周波数を得るためのネオン同位体と、最も長い中心周波数を得るためのネオン同位体とを混ぜると、全体的なゲインカーブは結果としてどちらの同位体のゲインカーブよりも広くなり、出力の増加と出力変動の減少をもたらします。周波数と波長両方に関する移行は次の通りです。

混合ガス 中心波長 (nm) 中心周波数 (THz) 周波数シフト対規格
純粋な Ne20 632.991420 473.612198 – 500 MHz
自然に豊富な Ne 632.991293 473.612293 – 405 MHz
パシフィックレーザーテック社規格 632.990752 473.612698 0
純粋な Ne22 632.990084 473.613198 + 500 MHz

ネオン同位体あるいはネオン混合比率を指定することにより、上記の周波数の1つ、あるいはその間に位置する周波数を得られると思うかもしれません。答えはイエスであり、ノーです。混合比率を制御した混合ガスで製造されたレーザーは、文書として記録され、検査される必要があります。こうすることで、レーザーが弊社に返却されればそれを複製することができます。弊社では、性能パラメータを同じく検査、検証をしてそのレーザーが予期された能力を発揮することを保証する必要があります。これらの要因を念頭に置けば、混合比率を制御した混合ガスでユニットを生産する合理的なビジネスのケースがあるに違いありません。それが販売台数、価格あるいは戦略的価値も含めて。混合比率を制御した混合ガスを提供することはできますが、必要とされる純度と認可を受けたガスは1リットル当たり数千ドルの費用がかかり、ある程度の熟慮をしないと実行には移せません。

弊社がよく尋ねられるのは、レーザーを製造後に中心周波数を変えられるかどうか、そして、もしできるならその費用はいくら掛かるのかということです。まず最初に「中心周波数」が実際に意味することについて合意する必要があります。典型的なHeNeレーザーでは、ドップラー効果で広げられたゲインカーブの中には実際は一つの「発振線」ではなく一つの「領域」が存在し、それは半値幅でおよそ1.6 GHzあります。これが意味するのは、標準的な作動パラメータの下で上の表に指定されている中心周波数から ± 800MHzでキャビティモードが発振しうるということです。しかしながら、後に説明されているように、この発振を積極的な周波数安定化によって大きく減少させることができます。

HeNeレーザーの周波数移行をもたらす他の要因には、物理的構造における製造公差、He:Ne 比率、ガスの温度と圧力などが含まれます。総合すると、おおよそ±50 MHz あるいは±0.0001 nmの付加的な不確実性が伴うことを意味します。

時間と温度の最悪状況の値と製造公差を考慮すると、弊社の標準的な製品が473.612698 THz ± 1,350 MHzの中心周波数を持つと仮定すると確実です。あるいは、波長で表現すると、632.990752 ± 0.001796 nmとなります。再び許容範囲が意味するのは、例えば何百何千という作動時間に亘る最悪の場合の値を表します。瞬間的な時間、あるいは数秒の時間間隔あるいは数分の間、安定性は明らかに極めて良くなります。

積極的な周波数安定化がないHeNeレーザーのスペクトル線幅
単一波長あるいはコヒーレント光の波長を作り出しているいかなるレーザーの人気の話題も、真に現実に基づいているとは言えません。ほとんどのHeNeレーザーは、マルチ縦モード(あるいは発振線)がキャビティに同時に発振するという状態で作動します。このことを、ビームプロファイルの構造に関連するマルチ横モードと混同してはいけません。レーザーがマルチ縦モードでかつ、(同じくTEM00として知られている)単一横モードを示すことはあり得ます。これらの用語はしばしば誤用され、誰かが「シングルモード」レーザーに言及するとき、これが単一縦モード、あるいは単一横モードのどちらのことを言っているのかについて、明確にする必要があります。

少数の特別なモデル以外、HeNeレーザーは単一横モード(TEM00)が近似ガウシアンビームプロファイルとして作動するよう設計されます。それでも、ほとんどはマルチ縦モードがキャビティに発振しています。縦モードの数は光周波数でc / 2L で分割されたレーザーのミラー間隔の関数です。最も短いHeNeレーザーは1本あるいは2本のモードが、ミラー間隔がより長いレーザーでは4本、5本、あるいはそれ以上の本数で発振します。何本のモードが存在するかを決定するのは、やはりネオンゲインカーブかゲインバンド幅(GB)であり、次の関係を示します。

\({n} = \frac{{\rm}{GB χ 2 χ L}}{c} + 1 = \frac{{\rm}{1.6GHz χ 2 χ L}}{2.998 χ 10^{8}m/sec} + 1 \)

nを整数化すると、随時発振できる縦モードの最大数を示すことになります。例えば、20cmのキャビティ長を持っているチューブは典型的に最高3本のモードを発振することになります。「ランダム偏光の」レーザーでは、それぞれの隣接した縦モードが一般に直交偏光となります。直線偏光レーザーでは、すべての縦モードは同じ偏光を持つことになります。それぞれのモードは一般に1 MHz より少し短い瞬間的なスペクトル線幅を持ちます。

最も悪い場合、レーザーのスペクトル線幅全体は、ドップラー効果で広げられたゲインカーブ(GW)プラス製造公差、気温変化と圧力効果などの影響を受けた幅となります。これは典型的に ± 0.002 nmとなります。秒あるいは分の時間では、スペクトル線幅はずっと少なくなります。

スペクトルの線幅をコヒーレンス長に変換
コヒーレンス長は、時間的コヒーレンスが際立って劣化するまでの伝播距離の基準です。より簡潔に表現すると、波が比較的正弦波的で予測可能である空間です。それは最大経路差とも表現でき、その上に干渉縞が干渉計内に生成され、次のように特徴づけられます。

\({L} = \frac{{\rm}{c}}{Δf} \)

ここでは、Hzに関連する時間中に、Lはコヒーレンス長(m)、c = 光速(m / 秒)そして Δf が周波数の変化(あるいは光源のスペクトル幅)を表します。

そのために、最悪の場合、長期の状況では、HeNeレーザーは以下のコヒーレンス長を持つことになります。

\({L} = \frac{{\rm}{2.998 χ 10^{8}m/sec}}{2.7 χ 10^{9}Hz} + 1 \)

つまり、発振がネオンゲインカーブの幅、製造公差、温度などを考慮に入れて起こりうる前述の2.7 GHz の効果的なバンド幅に基づいて約10 cm。特定のレーザーをラボ環境で典型的なテストと計測を通常に使用する場合、この値は通常そのおよそ2倍、つまり20cmのオーダーとなります。

積極的な安定化HeNeレーザー
普通のHeNeレーザーでは、熱の効果がキャビティ長を変化させるにつれて、縦モードはネオンゲインカーブ内をさまよいます。そのため、たとえレーザーが単一縦モードで発振しているとしても、ネオンGBの中のどこにモードが発生するのかを予測する方法が無く、結果的に約±1.5 x10-6の光周波数内での不確実性をもたらします。

特別な製造技術によって、HeNeレーザーは0.5 MHz 以下のスペクトル線幅で単一縦モードで作動させることができます。

結果として、500m程のコヒーレンス長が1時間以上に亘って観測されたり、数千mのコヒーレンス長が数秒にわたって達成されることが一般に観察されます。これは不安定なレーザーと比較して100倍から1000倍以上の改善を意味します。こうしたレーザーは、波長計やスペクトロメータといった精密機器で光周波数のリファレンスとして広く使用されています。

最も普通の安定化レーザーは、短いランダム偏光のHeNeレーザーチューブをベースとし、2つの縦モード(PとS)をネオンゲインカーブ内で両足を広げるように発振させることができます。制御装置は、片方か両方のモードの振幅を感知し、かつ電気的にヒーターを稼働して数ナノメートルの精度でキャビティ長を維持することで、ネオンゲインカーブに対して定まった位置でモードを無期限に固定します。偏光子が不要なモードを排除します。安定化レーザーは、HeNe発振プロセスの本質的特性にロックされているため、このタイプのレーザーが± 2x 10-8を上回る典型的な長期に亘る正確さで距離測定アプリケーション用の至適基準となっています。

そしてさらに高い精度を求めるため、パシフィックレーザーテック社製HeNeレーザーチューブの単一縦モードは、ヨード蒸気の吸収線にロックでき、結果的に±1 x10-10を超える絶対の正確さを持つ光周波数水準をもたらします。

HeNeレーザーは現在その60回目の誕生日を迎えているにも関わらず、これらのアプリケーションでHeNeレーザーを超えるレーザーは他に存在しません。

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