テクニカルノート

元素としての輝線スペクトルとレーザーとしての発振線

2020年 02月05日

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レーザーという用語は「放射の誘導放出による光増幅」を表します。しかしながら、レーザーは我々の大部分が知っているように、増幅器というよりむしろ実際は光源 - 発振器です。 (レーザーアンプが、光ファイバー通信連携増幅装置と慣性核融合研究のためのマルチギガワットレーザーアレイなど多様なアプリケーションで存在してもおりますが。) もちろん、すべての発振器は - 電子式、機械式、あるいは光学式にせよ- アンプに適切な種類のプラスのフィードバックを加えることによって構築されます。

すべての物質は励起されると、明るい輝線スペクトルとして知られているものを示します。ガスに関しては、スペクトルは電流あるいは高周波(RF)フィールドで発生します。ルビーのような固体に関しては、キセノンフラッシュランプからの明るい光パルスが使用されます。スペクトル線は、より高いエネルギー準位からより低いエネルギー準位への物質原子内の電子の自然発生的な遷移の結果です。同様の暗線の組み合わせが広範囲の帯状光内に現れますが、それは、物質を透過することで特定の波長におけるエネルギーの吸収が発生するからです。エネルギー準位の不連続な組み合わせと遷移の不連続な組み合わせだけが量子則に基づいて許されます。(この書類の範囲を大きく越えることに感謝しつつ!)分光学全体は、すべての物質が独自のスペクトルの特徴を持っているという事実に基づいています。

HeNeレーザーはネオンガス内のエネルギー準位遷移に依存します。ネオンの場合、このスペクトルの中に、何百ではなく発生可能な波長の輝線が数十本も存在します。よく知られた赤い HeNeレーザーの632.8nmの輝線の近くにより強い輝線が数本存在し、632.8nmの輝線が最も強いわけではありません。

最も強い赤色の輝線は640.2nmです。633.4nmにも同程度に強い輝線が存在します。そうです、632.8nmではなく、633.4nmなのです。この輝線を作り出すために使われるネオン原子の高エネルギー準位のため、632.8nmの輝線は普通のネオンスペクトルの中では非常に弱くなります。

ヘリウムとネオンの輝線スペクトル
Heの輝線分布
Neの輝線分布

(こうした相対的な明るさは現在のところは正確であるように思われません) スペクトルの詳細は「レーザースターズ - ガス電離ページ」を参照のこと。(http://laserstars.org/data/elements/)そして「Skywise のレーザーと光学資料室」に大部分の可視の輝線の非常に詳細な注釈の付いた実際のHeNeレーザー電離スペクトルの写真(下図)があります。

可視輝線チャート

より強い輝線の1本ではない出力波長についてのコメントは、たいていのレーザーにおいて正当であり、そのエネルギー準位は自然発光によって使い果たされますが、望まれることではありません。
スペクトルについては、多くの赤外線の輝線と同様に、オレンジ色の、黄色の、そして緑色の領域にも何本か存在します。
ヘリウムは発振(光発散)プロセスには関与しませんが、ネオン原子との衝突を経て電離から得られるエネルギーをネオンに与えるために使われます。 このプロセスが、ネオンをより高いエネルギー状態(準位)まで持ち上げ、結果として基底状態あるいは均衡状態の原子よりも、より高いエネルギー状態(準位)にある原子が多くなるという反転分布をもたらします。

ヘリウム – ネオン励起と発振プロセス

上図から分かるのは、632.8nmの発振線を産み出す遷移の上の準位(他の可視の He – Ne 発振線と同様)が、ヘリウムの最も低い励起状態のエネルギー準位にほとんど正確に合致するエネルギー準位を持っているということです。 これらの2つの状態の間の振動結合は高度に効率的です。

(1): DC放電あるいは RFフィールドが 2sエネルギー準位までヘリウム原子を励起します。
(2): 衝突が効率的にエネルギーを受け渡して、 Ne 原子を3s2 エネルギー準位に持ち上げます。留意すべきは、より上のエネルギー準位に上がるために20電子ボルトを超える比較的高いエネルギー準位が関与したことです。
(3): 誘導放出(発振)はいくつかのネオン2p状態の1個に落下をもたらします。
(4):放射減衰(自然発光)は Ne を発振最終状態から 1s状態まで落とします。
(5):チューブ内壁との衝突は、Ne を 1s状態から基底状態まで落とします。

632.8nmに関しては、1つのミラーが632.8nmにおいて(典型的に99.9パーセント、あるいはさらに高く)高い反射率を示します。 これが「高率反射鏡」すなわち HR です。 もう一方のミラーは632.8nmにおいて99パーセントの典型的な反射率を持っているでしょう これが「アウトプットカプラー」すなわち有用なビームが発生する OC です。 他の波長での発振を抑制するために、ミラーは一般にその波長でより低い反射率を持つように設計されます。 (すべての He – Ne レーザーの発振線のすべて、特に「他の色」の発振線が低ゲインである場合、このことは632.8nmにとって大きな問題ではありません。)

(4)と(5)が生じる率が究極的に He-Neレーザーの出力を制限し、かつ、励起(1)の増加が最適な出力レベルを減少させる理由を説明します。

混合ガスは主としてヘリウムである(典型的に5:1~10:1、He:Ne)必要があり、そのためにヘリウム原子が励起され得ます。 励起されたヘリウム原子はネオン原子に衝突し、それらの一部を632.8nmで放射できる状態にまで励起します。ヘリウムの無い状態だと、ほとんどのネオン原子はレーザー発振を起こせない準位への励起にとどまるでしょう。混合ガスは非常に純粋な状態である必要があり、少しでも混入があるとはぐれ原子(水素、酸素、窒素など)の励起を起こしてエネルギー状態(準位)、を下げてしまい、その結果は常に粗悪に製造されたネオン管のようなグローを起こすことに繋がります。
ヘリウム無しのネオンレーザーを構築することもできますが、それはかなり難しく、その出力はこのエネルギー結合の手段も無いためかなり低いものとなるでしょう。そのため、十分な量のヘリウムを失った He-Neレーザー(例えば、封印箇所やガラスチューブ経由のガス抜けなど)は、ポンピング効率があまりにも低いためにまったく発振しなくなります。

しかしながら、純粋なネオンが細いチューブ(例えば、長さ40センチ x 1ミリの内径)でオレンジ色(611.9nm)と黄色(594.1nm)で、オレンジが最も強く非常にはっきりと発振します。 超放射が意味するのは、ミラーは使用しないが、ファブリィ – ペローキャビティの付加(例えば、ミラー!)が横のコヒーレンスと出力を改善するということです。この点は、H・G・ Heard とJ・Petersonによる「純粋なネオンによる超放射での黄色とオレンジのレーザー遷移」、 IEEE での議事録、1964年10月、 Vol. # 52、ページ # 1258からの引用です。彼らは、励起のためにパルス状高電圧電源を使いました。(彼らはシステムを連続波モードでは操作しませんでしたが、それが可能だろうと推測はしました。)

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