テクニカルノート

②レーザービームのアナモルフィック整形

2021年 11月26日

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楕円断面のコリメートレーザービームを円形ビームに変換する、あるいはその逆を行う方法

Ulrich Oechsner, Christian Knothe,Mats Rahmel による

アナモルフィックビーム成形用光学部品を用いて楕円形レーザービームを丸い形状に変換してから、シングルモードファイバーに導入します。逆に、元々は丸いレーザービームを楕円形状に変換する必要がある場合もあります。
本論文は若干の例となるアプリケーションについて説明し、アナモルフィックビーム整形のいくつかの概念とそれぞれの長所と短所について論じます。

楕円ビームを放出するレーザー光源の例(図1)には半導体レーザーとテーパー型増幅器があります。どちらも、ビーム形状はそれらの半導体活性層の平面構造によるものです。

図1:
半導体レーザービームのアナモルフィック整形。 コリメート(平行光化)後にビームが楕円形となる。
上図の 5AN のようなシリンダーレンズテレスコープがビームを円形に変換する。

半導体レーザー

横シングルモード半導体レーザーは楕円形の発散ビームを近ガウシアン強度分布で発振します。垂直発振の発散角が大きいほど、活性発光層への平行度は小さくなります(図2)。

図2:
非点収差∆As を持つ半導体レーザー

さらに、半導体レーザーは大方 s 方向と p 方法の2箇所の発光源つまり非点収差が存在し、光軸ズレ ΔAs として特徴づけられ(図2)それは通常半導体レーザーの非点収差と呼ばれます。典型的な半導体レーザーの縦横比は 1:2 ~1:3 であり、典型的な半導体レーザーの非点収差は 5~50 ミクロンですが、それぞれの後者の数値は、最近の半導体レーザーではめった見られない数値です。

これらのレーザービームをレンズで平行光化すると、楕円形状は維持されます(図1)。非点収差を無視できる場合にのみ、両方の主要軸に沿ったコリメーション(平行光化)が同時に可能となります。

テーパー型増幅器

テーパー型増幅器は光学的に活発な半導体素子であり、レーザービームの出力を100倍以上に増幅します。これは非線形プロセスであり、増幅器は入射レーザーを種光とするレーザーとして稼働します。波長および偏光の特性は保存されます。

入射あるいはシードレーザービームはテーパー型増幅器の入射面に導入されます。

増幅器内部では、活性領域が一方向に引き伸ばされ、大きい縦横比の長方形の出射面をもたらします。この伸長により、出射端面領域が極めて大きくなり、数ワットにおよぶ出力が可能となり、標準的な半導体レーザーの端面を破壊することも起こりえます。ただしこれは強度な楕円で非点収差のある出射ビームももたらすこととなり、それを整形し非点収差への修正も加える必要があります。

また、半導体レーザーをシードとして用いる場合、アナモルフィックビーム整形と非点収差補正が入射側にも必要とされます。出射側では、テーパー型増幅器が半導体レーザーと同様の縦横比と非点収差を持つ場合がありますが、 通常は 1:6 超の縦横比と数百ミクロンの非点収差を持ちます。

ビームを1本のシングルモードファイバーに導入する場合に、レーザービームの楕円形状と非点収差はどちらも問題となります。

シングルモードファイバー

シングルモードファイバーは、横基本モード LP01 のみで光を伝播する特殊なファイバーです。ファイバーから出射している光のフィールド分布(モードフィールド)は近ガウシアンです。偏波面保存シングルモードファイバーは、レーザー光源の直線偏光を維持するために使用します。

低品質のビームを出射するレーザー光源の場合、シングルモードファイバーは洗浄効果を持っており、空間フィルターとして機能します。さらに、極めて安定した設定を必要とする計測の場合、シングルモードファイバーが、レーザー光源とさらに敏感な計測環境間の定義されたインタフェースとして機能することもできます。ガウシアンレーザービームをシングルモードファイバーにカプリングするのが最適となるのは、ファイバー入射端での(焦点が合っている)ビームのフィールド分布がファイバーのモードフィールドに可能な限り最良の適合であるときです。

シングルモードファイバーは円形のモードフィールド、もしくは一部の偏波面保存シングルモードファイバーの場合は円形に近いモードフィールドを持ちます。また、非点収差はありません。そのため、楕円形あるいは非点収差のビームは、低効率でカプリングされます。

カプリング効率を決定するために、ファイバー入射端におけるファイバーのモードフィールドとレーザービームのフィールド分布間の重なりを計算します。図3は、縦横比が 6:1~1:6 まで変化する時の楕円ビームでの結果例を示し、図4は、円形だが非点収差のあるビームの例を示します。通常、両方の効果は同時に存在し、事態を悪化させます。

図3:
シングルモードファイバーへのさまざまな縦横比における楕円ビームの相対カプリング効率。
例えば縦横比 2 は、カプリング効率を約 64%に下げます。
図4:
円形であるが非点収差を持つビームの相対カプリング効率、非点収差のフォーカス距離は 0, 20, 50, および 100µm。
例は波長 660nm でモードフィールド径 4µm の場合。

そのため、高いカプリング効率が必要とされる場合、ビーム形状と非点収差の両方を修正する必要があります。アナモルフィックビーム整形にはいくつかの手法があります。すべての手法で楕円ビームを修正できますが、非点収差を修正できるのは2通りの手法だけです。

アナモルフィックプリズム対

最も古くて単純な方法の1つは、必要であればまずレーザービームを平行光化し、次に1対のウェッジプリズムを用いてビームを一方向に拡大することです(図5a)。この設定でビーム形状は変わりますが、存在するいなかる非点収差も光学部品の追加無しで修正することはできません。プリズムによる光軸の横移動はしばしば欠点となります。

図5:アナモルフィックビーム整形のためのいくつかの方法
(a)アナモルフィックプリズム対

アナモルフィックシリンダーテレスコープ

もう1つの方法は、2つのシリンドリカルレンズを用いて、一方向へのガリレオテレスコープとして使用することです。図5b はこれが半導体レーザーでどのように使用されるかを示しています。コリメートレンズは、ガウシアン強度分布を持つコリメート(平行光化)された楕円ビームを生み出します。付加的に非点収差の差異∆As が出る場合、ビームを主要な光軸の片方だけにコリメート(平行光化)を掛け、もう一方の光軸については発散させます。シリンドリカルテレスコープには、凸と凹のシリンドリカルレンズが組み込まれており、長い方の楕円軸を縮小し、短い方の楕円軸に合わせます。一方向のみへの発散分を補償するため、シリンドリカルレンズ間の距離を調節します。

図5:アナモルフィックビーム整形のためのいくつかの方法
(b)アナモルフィックシリンドリカルテレスコープ

ビームをこの方法で再フォーカスすると、スポットは円形となるだけではなく、平面波面を持つようになります。

こうした2要素設計により、単純な平凸と平凹シリンドリカルレンズを採用することで、優れたビーム品質を達成することが可能となります。両方のレンズの収差がお互いを相殺して全体的な回折限界設計をもたらすようにレンズ曲率とガラス組成を選択します。

一枚シリンドリカルテレスコープ

アナモルフィックシリンドリカルテレスコープは、時には一枚の単一ガラスの部品として提供されます。ビームはシリンドリカルテレスコープでの説明と同様に整形されますが、距離や波面を修正することはできません。特定の非点収差を修正しようとすれば可能ですが、半導体レーザー(ビーム)に含まれる様々な非点収差には対応しません。一枚構造にはもう1つの欠点があり、ガラスが1枚だけのため、回折限界性能を達成するには純粋なシリンダー形状では不十分です。「非シリンダー」形状を採用し、その断面は円形ではなくもっと複雑な非球面カーブとなります。

球面レンズとシリンドリカルレンズの組み合わせ

一部のテーパー型増幅器の出口などで縦横比と非点収差の両方が非常に大きい場合、プリズムやテレスコープの設置は適切ではありません。このような場合には、2本を交差させたシリンドリカルレンズか、あるいは球面コリメート用光学部品と単凸シリンドリカルレンズの組み合わせを採用します(図5c)。どちらの設定でも、高い縦横比を整形し、大きな非点収差を補正するができます。ただし、特に在庫のレンズを使用する場合は、結果として得られるビーム品質にしばしば問題が見られます。

図5:アナモルフィックビーム整形のためのいくつかの方法
(c)球面レンズとシリンドリカルレンズの組み合わせ。

長所と短所

プリズム対と一枚構造では、多くの楕円形レーザービームに存在するさまざまな非点収差を補正することはできません。球面が必要とされる場合であるだけではなく、高効率のファイバーカプリングで必要となる平面波面を求められる場合、これは短所となります。コストを考えると、プリズム設定が最も単純な光学部品となりますが、オフセット光軸故に機構はずっと複雑となる傾向があります。

全般的に見てシリンドリカルレンズテレスコープ設定が、コストとパフォーマンスの両方で良好と思われ、形状補正と非点収差補正も含めて最適のビーム品質を提供します。回折限界とアクロマートのパフォーマンスも、「単純な」シリンドリカルレンズのバランスのとれた工学設計で可能となります。非シリンダー(非球面)レンズは必要ではありません。

回折限界設定は、この文書の冒頭で言及した2次元双極子トラップで必要とされる楕円形ファイバーコリメーターのように、もともとは円形のレーザービームを楕円形状に変える「逆」の課題にも不可欠です。

他方、テレスコープ設計は約 1:3 の縦横比に限定されます。2基以上のテレスコープを枝分かれで設置することも可能ですが、より小型で単純な解決策があります。

入手方法とアプリケーション

アナモルフィックビーム整形光学部品シリーズ 5ANはシリンドリカルテレスコープの原則に基づいており、縦横比 1:1.6~1:3.まで Schafter+Kirchhoff 社から購入可能です。典型的なアプリケーションは、1:3 までの縦横比で半導体レーザーやテーパー型増幅器からのビームをファイバーカプリングすることです。

トラップ用の楕円ビーム

また専門的なファイバーコリメーターのシリーズも用意されており、ファイバーコリメーター、アナモルフィックビーム整形光学部品 5AN とビームエキスパンダーを組み合わせて楕円形の断面を持つ大きなビームを生成することもできます(図6)。 原子やより大きな分子をレーザービームの焦点でトラップできます。この効果によってレーザービームを「光ピンセット」としてそれらを動かしたり、所定の位置に固定することができます。

図6:2次元磁気光学トラップ(2D-MOTs)で使用される楕円形ファイバーコリメーター。
タイプ 5AN シリンドリカルレンズテレスコープを用いて 1:3 の縦横比にビームを拡張します。

レーザービームと磁場を組み合わせることで、原子を冷却したり量子光学実験(磁気光学トラップ、 MOT)用にトラップすることもできます。2次元磁気光学トラップ(2D – MOTs)用や磁気光学ミラートラップ用では、レーザーの楕円形状が好まれます。これらの実験で使用されるレーザービームはシングルモードファイバーから出射されるため、よく丸い形状となります。アナモルフィックビーム整形を用いて必要とされる楕円ビーム形状を生み出します。

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