テクニカルノート

⑤偏光状態を自由に設定できる偏波アナライザー

2022年 01月06日

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偏光状態の計測、偏波面保存ファイバーの正確な光軸調整、および偏光の任意の状態での精細な調整

Anja Knigge, Michael Schulz, Christian Knothe および Ulrich Oechsner による

図1:偏波面保存ファイバー調整用の SK010PA 偏光アナライザー。時間の掛かる光軸調整作業を効率的に完了。
USB対応装置は 370–1660nm の幅広い波長範囲で利用可能。

偏光状態は多くの光学計測技術において重要な意味を持ちます。正確な計測と同様、偏光の定義づけた調整と設定はより高度な計測にとって重要です。

偏光アナライザーは、自由空間アプリケーション(図1)での定義づけた偏光状態の設定はもちろん、偏波面保存ファイバーへの直線偏光光の正確なカプリング用に開発されました。USB 経由での通信と電源供給を備えた小型設計により既存の設定への容易な組込が可能となり、遠隔計測装置として使用したり産業ルーチンに永続的に組み込むこともできます。

偏光

レーザー光源の電磁場 E(t)は、光の横方向性故に、周波数 ω、強度 Êx,Êy および位相 δx,δy での2つの直交平面波 Ex(t)および Ey(t)の重ね合わせとして
表現できます:

\({E_{x}(t)} = Ê_{x} cos(ωt + δ_{x}) \)
\({E_{y}(t)} = Ê_{y} cos(ωt + δ_{y}) \)

位相差 δ=δy–δx と振幅により、直線性(δ=nπ,n∈N0)から楕円性および円性(Êx= Êy,δ=±π/2)に偏光される偏光のすべての状態が表示されます。x-y平面上では、ベクトル(Ex(t),Ey(t))が楕円を表示します。図 2a を参照。この楕円は2つの数値で定義されます。数値の一つは、x軸と真円度 η に関する方位角φです。

\({sin2η} = \frac{{\rm}{2 ・ Ê_{x}・Ê_{y} ・ sinδ}}{Ê_{x}^{2} + Ê_{y}^{2}} \)

\({tan2φ} = \frac{{\rm}{2 ・ Ê_{x}・Ê_{y} ・ cos δ}}{Ê_{x}^{2} – Ê_{y}^{2}} \)

図2: 楕円(a)での方位角φと真円度ηの定義。
偏光の状態はポアンカレ球上に全単射としてマッピングされる。1つのSOP(偏光状態)がオレンジ色に彩色される(b)。

通常、レーザー光源からの放射光は、明瞭な直線偏光を持ちます。例えば白熱電球からの放射光などの偏光されていない光の場合、全方向への偏光が統計学的に等しく存在します。各 SOP(偏光状態)は全単射としてポアンカレ球と呼ばれる球面にマッピングされます(図 2b)。直線偏光の状態は球面の赤道上に、円偏光光は(電場ベクトルの回転の識別によって)球面の北極あるいは南極に投射されます。 他のいかなる楕円状態も、残りの球面上のどこかに必ず投射されます。

偏光(状態)を完全に記述するために4つの独立したパラメータの設定、すなわち Êx(t),Êy(t)と位相δx,δy が必要となります。ストークスパラメーターS1、S2、S3 および光強度 S0、あるいは正常化されたストークスパラメーターS1、S2、S3 および Si=Si/S0 を使用します[1] 。

\({\bar S_{1}} = cos2η・cos2φ = \frac{{\rm}{Ê_{x}^{2} – Ê_{y}^{2}}}{Ê_{x}^{2} + Ê_{y}^{2}} \)

\({\bar S_{2}} = cos2η・sin2φ = \frac{{\rm}{2・Ê_{x}・Ê_{y}・cosδ}}{Ê_{x}^{2} + Ê_{y}^{2}} \)

\({\bar S_{3}} = sin2η = \frac{{\rm}{2・Ê_{x}・Ê_{y}・sinδ}}{Ê_{x}^{2} + Ê_{y}^{2}} \)

全体の光強度 S0 は、偏光光

\(\sqrt{S_{1}^{2} + S_{2}^{2}+ S_{3}^{2}} \)

と、偏光されていない光両方の強度で構成されます。

偏光度 DOP は以下のように定義され、

\({DOP} = \frac{{\rm}{\sqrt{S_{1}^{2} + S_{2}^{2}+ S_{3}^{2}}}}{S_{0}} \)

完全偏光光を意味するのは数値1です。
DOP≠0の場合、ポアンカレ球を偏光光の強度で正常化することが出来、ストークスパラメータはポアンカレ球上の偏光状態のデカルト座標(x、y、z)に等しくなります。

偏光、コヒーレンスおよび偏波面保存シングルモードファイバー

シングルモードファイバーは横基本モード LP01 で光を伝播する特別なファイバーです。ファイバーから出射される光のフィールド分布(モードフィールド)はほぼガウシアンです。光は等しい伝播定数で2つの主要な偏光状態に導入されます。ただし、ファイバーに欠陥があると、主要な SOP(偏光状態)の等しい伝播定数と結果として生じる位相整合のために2つの主要な偏光状態の間でのランダムな出力転送を起こします[2]。

偏波面保存ファイバーには2つの主要な偏光状態の縮退を解くための応力要素が組み込まれているため、回転非対称となっています。光は2つの異なる伝播定数、いわゆる「速い」軸または「遅い」軸のどちらかに導入されます。軸の片方に導入された直線偏光光が維持されます。光が片方の軸に部分的に導入されると、光源のコヒーレンスが結果としての偏光(状態)を決定します。

光源のコヒーレンス長が2つの主要な SOP(偏光状態)内の光の間の光路差より長い場合、主要な(2つの)軸に別々に導入された光は、出射時に任意の楕円状態として再結合します。真円度(楕円度)は、2つの構成要素それぞれの位相シフトに依存します。圧力と気温変化がこの位相差に影響を与え、結果として生じる楕円状態にも影響を与えます。

レーザーのコヒーレンス長が光路差より短い場合、2つの主要 SOP に導入されて出射する放射光の間に定義された位相関係は存在せず、光は部分的に偏光解消されます。

こうした理由から、偏波面保存ファイバーの偏光軸を光源の直線偏光軸に正確に光軸調整することは極めて重要です。偏光消光比 PER (2つの偏光軸に導入された光出力間の比)は、ファイバー光軸調整に於いて決定的要因となります。

図3は、レーザー光源と理想的なファイバーのファイバー軸間の角度に光軸調整を行う際に必要とされる(入射)角度正確性を示しております。図3から分かるのは、必要とされる(入射)角度正確性は約1度であるということです。

図3: 60SMS レーザービームカプラーによる偏光軸の光軸調整:
光源の偏光軸がファイバーの偏光軸に不正確に光軸調整されている場合の偏光消光比(PER)。

こうして、40dB(1:10000)という仮説ファイバーの理論的な偏光消光比(PER)が約 32dB(1:1585)に削減されますが、それでも非常に良い数値と言えます。

偏光計測

ここで詳細する偏光アナライザーには2つの主要な使用法があります。1つは、光源の偏光軸に偏波面保存ファイバーを光軸調整する際のモニタリングであり、他方は、一般的な偏光状態の決定と必要に応じた定義付け設定の実現です。偏光(状態)は、回転するλ/4 板と固定された偏光子を通過した後でフォトダイオードに到達する光を評価することで決定されます。

ストークスパラメータはフォトダイオードシグナル光と λ/4 板の時 / 位置情報の詳細な分析から検索されます。偏光状態はそれからポアンカレ球上に表示され、(北半球あるいは南半球上に描写される)回転(方向)の識別と同様に偏光状態のいかなる変化も容易に確認できます。

偏光楕円、偏光状態の一般的表示も表示されます。DOP 楕円が低コヒーレンス光源の偏光(状態)の視覚化を補完します。

コヒーレントレーザー光源の偏波面保存ファイバーへのファイバー光軸調整

偏光消光比 PER と偏光度 DOP が効率的に決定されて表示されることが、直線偏光光源を偏波面保存ファイバーに迅速かつ正確に光軸調整する際の基本となります。

偏光軸の片方に完全には導入されていない直線偏光光の偏光は維持されず、温度と(ファイバーへの)負荷(ストレス)の変化で偏光(状態)も変化します。ファイバーを強く急に動かすと、偏光状態はポアンカレ球面のセクション間を激しく移動します。例えば温度を変化させる、ファイバーをゆっくり曲げるなどのより明確な環境変化の場合、2つの主要な偏光状態間で誘発された位相シフトに応じてポアンカレ球上にデータ円が表示されます。

この円は現在の光軸調整で起こりうるすべての偏光状態を表しており、(円の)中心が平均偏光消光比を示します。理想的な偏波面保存ファイバーの場合、平均偏光消光比は赤道上に位置するはずです。 赤道から最も遠いデータ点は、現在の光軸調整で起こりうる最悪の偏光消光比を示します。

ファイバーのカプリングを調整する際、ポアンカレ球上の円の半径は光軸調整の質を示します。なぜなら半径がファイバー偏光軸と光源の偏光軸の間の角度差を示すためです。理想的な直線偏光光源を想定すると、円の半径は不正確な光軸調整のファイバーでは大きくなり( 偏光(状態)は周囲の条件によって大きく変化する)、 正確に光軸調整されたファイバーでは小さくなります。最適に光軸調整された理想的なファイバーの場合、データ円はポアンカレ球の赤道上の一点に集束します。

ファイバーカプリングを調整する際、温度を変えたりファイバーを慎重に曲げながら一連の計測ポイントで計測を実行し、データ点の円形軌道を(ポアンカレ球
上に)描きます。円が自動的にデータ点に照合され、平均と最小の PER が表示されます(図4a)。次にファイバー偏光軸を光源の偏光軸に対して回転させて、円の半径が最小になるようにします(図4b)。調整が成功すると色分けされた対数バープロットとして表示されます。2回目の計測で、ファイバーの最適化された光軸調整のパラメータを表示します。

図4:コヒーレントなレーザー光源での偏波面保存ファイバーの調整。調整の目的はデータ円半径の最小化。
ファイバー偏光軸とレーザー偏光軸が大きな角度差を持つ場合、ファイバーを曲げたり周囲温度が変化すると偏光状態が大きく変化する(a)。
ファイバーの角度光軸調整が良ければ、偏光の変化量が小さくなり、データ円(b)の半径も小さくなる。

偏光アナライザーを用いての障害の特定

偏光アナライザーは、若干の仮定を立てた上で、ファイバーコネクターや入射カプリングおよび出射カプリング光学部品にて複屈折などによって引き起こされる障害を特定するために使用することもできます。

複屈折から物質の光学的性質が分かり、(その物質の)屈折率と対応する移動速度が偏光と方向依存をし、通過する光の偏光状態を変化させます。ストレスによる複屈折が、機械的ストレスによる光学的異方性であることを示します。

障害がファイバーコネクターのみで発生すると想定した場合、ファイバーの入射側と出射側を交換し、直線偏光の光源にファイバー調整を最適化してから、2回連続で PER 計測を行なうと、これらの障害(の発生原因)を特定できます。

円が大きいほど、より多くの障害が現在の入射ファイバーコネクターで発生します。そのため、ファイバー光軸調整を行う際に達成しうる最小の半径が、入射ファイバーコネクターでのストレスによる複屈折の測定値となります。

ファイバー入射側と出射側を交換すると、赤道と円の中心の距離(平均偏光比)は、円の新しい半径となり、(交換)前の円の半径(角度偏差)が、赤道からと円の中心の新しい距離になります。PER ではなく偏光状態の安定性が主要な重要性を持つ場合、ファイバーの入射側と出射側の交換によって最も安定したファイバー設定が明らかとなるでしょう。

計測の正確さ

偏光アナライザーは、異なる波長範囲に対して慎重にキャリブレーションを行う必要があります。統計的考慮から、若干の洞察が不確実性と計測エラーについて必要とされます。方位角φと真円度 η は共に±0.4°の計測不確実性を持っています。PER 測定の正確さの査定は些末なことではありません。それ自身が PER 依存しており、PER 値との不均衡を増加させます。25dBという典型的な PER の場合、 PER 測定正確性は±0.5dB と想定できます。35dB 超の値での PER 測定はすでに数 dB 規模のかなり大きな測定不正確性を持っており、表示通りに受けとるべきではありません。

位相差用光学部品の光軸調整

自由空間ビーム設定では、偏光アナライザーを用いて位相差用光学部品の光軸調整や数値化を行うことができ、Schafter+Kirchhoff 社製の λ/4 板内臓のファイバーコリメーターが磁気光学トラップ用に量子光学で使用されています。

現れる偏光を、特殊なツールで λ/4 板を回転させることで操作することができます。全回転を行うと、ポアンカレ球上の8の字形に対応します(図5)。円偏光光が達成されるのは、北極に位置する右回りの円偏光と南極に位置する左回りの偏光として極に到達するときです。光学部品の実際の位相差が必要な数値から逸脱している場合、極値は(ポアンカレ球上の)極に達しません。そして偏光アナライザーは光学部品の実際の位相差の測定値を表示します。

図5:ポアンカレ球上に表示される λ/4 板の光軸調整。
偏光状態は λ/4 板の回転に合わせて8の字形を表示する。
円の SOP(偏光状態)の場合、この数値の極値が極に対応し、右回り円偏光は北極に、左回り円偏光は南極に位置する。

計測ルーチンへの組み込み

偏光アナライザーは 40 x 70 x 82 mm の寸法があり、クラス最小の計測装置の1つです。種々のバージョンで UV から赤外(370–1660 nm)までの波長範囲で利用可能です。偏光アナライザーは評価用コンピュータのUSB ポート経由の供給電源で稼働します。

外部の電源供給が不要なため、遠隔計測装置として理想的です。

偏光アナライザーはマイクロベンチシステム(ケージシステム)と共用できます。Schafter+Kirchhoff 社製の標準的なファイバーコリメーター用の様々な直径の光学部品用のマイクロベンチアダプターが利用可能です。FC-APC および FC-PC (SC および E2000) 用のファイバーアダプターをファイバーカプリングの光軸調整に使用します。アナライザーは一般の光学ベンチシステムの大部分への接続が可能です。切り換え後に装置が追加の再目盛り合わせを必要としない場合には、ファイバーアダプターを用いて自由空間ビームモードとファイバーカプリングモード間の素早い切り替えも可能です。

SKPolarimeter ソフトウェア以外に、特別な計測ルーチンと顧客のソフトウェアに組み込むためのランタイムライブラリ(DLL(Dynamic Link Library))が提供されております。SKPolarimeter ソフトウェアのいかなる特長も、C, C++, C#を使って顧客のシステムに組み込むことが可能です。この中には、PM ファイバー光軸調整のための偏光消光比計測で必要とされる様々なパラメータ、全グラフィック表示および全ルーチンを入力するためのダイアログ・ボックスが含まれます。

結論

偏光アナライザーSK010PA は、クラス最小の計測装置の1つです。時間がかかる光軸調整作業を、自由空間ビームとファイバー光学部品アプリケーション用に効率的に完了できます。

特別なルーチンで直線偏光光を偏波面保存ファイバーに正確に導入することができます。偏光状態をポアンカレ球上で継続的に更新し表示します。

DOP の表示と偏光消光比に加えて、偏光状態と計測終了のグラフィック表示によって光軸調整過程を迅速かつ効率的に完了することができます。偏光アナライザーを用いて定義された偏光状態を自由空間アプリケーション、例えば Schafter+Kirchhoff 社製のλ/4 板内蔵のファイバーコリメーターなどに導入することができます。

偏光アナライザーは USB 経由で通信と電源確保を行います。様々なバージョンで波長範囲 370-1660nm に対応します。梱包内容には、マイクロベンチシステムと共用できる偏光アナライザーと FC-APC コネクター用のファイバーアダプターが含まれます。DLL(DynamicLink Library) ランタイムライブラリによって、さまざまなグラフィック表示とルーチンの利点を失うことなく偏光アナライザーを顧客独自の計測ルーチンとソフトウェアに組み込むことができます。

参照
[1] F. Pedrotti, L. Pedrotti, W. Bausch, H. Schmidt: Optik für Ingenieure, Grundl agen, Springer, Berlin, 2. Edn, 2002.

[2] M. Born, E. Wolf: Principles of Optics, Pergamom Press ,1984.

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