光シンセサイザによる高精度(10-19レベル)な周波数比較の実現

2021年 04月22日

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現在、フェムト秒レーザーベースの光シンセサイザーが光周波数標準として利用されている。本研究では、この光シンセサイザーを用いてレーザー出力の一部に対し100THzを超える周波数間隔(制御帯域)における電場波形の生成や制御を行い、10-19近くのレベルで相対的な不確かさ (fractional uncertainty) を取得することに成功した。周波数計測の不確かさの再現性については、3か所の研究所 から提供されたフェムト秒レーザーベースのシンセサイザーをそれぞれ比較し、確認することができた。

現在、基底状態にあるセシウム原子の超微細構造間におけるマイクロ波周波数の遷移を基準にしたマイクロ波領域の周波数標準は、一部の光出力を切り出した測定において10-15レベル(3000万年に1秒のずれに相当)という相対的な不確かさ (fractional uncertainty) で評価できる(1)。しかしながら、近年、超安定化レーザー (4, 5) を用いて 光周波数の遷移に位相同期をさせ、イオンや原子を 極低温領域まで 冷却、捕獲するレーザー冷却技術が進歩したことにより、従来のマイクロ波標準を何桁も超える 光周波数標準(1) (光周波数領域の原子時計、光時計(2, 3) )の 安定化と高精度化が期待されている。 例えば、(自由空間中にある)電気的に中性のカルシウム原子 や 水銀イオン を用いた光周波数標準は、当時の最高精度であったセシウム原子時計のマイクロ波を用いた光周波数標準に対して 1 ~ 2桁高い安定性をもち (2)、単一イオン光周波数標準(イオン光時計)は10-18近くの相対不確かさ (fractional uncertainty) に近づくと予想されている (6)。 ただし、光周波数測定の精度をさらに向上させるには、より多くの研究者が時計遷移観察レーザーを利用し、異なる原子を用いた光時計の周波数比を測定する必要がある。

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