テクニカルノート

⑭ 縦モードプリング(周波数引き寄せ)

2022年 06月02日

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レーザーはキャビティ共鳴周波数の倍数である C/2L で発振すると入門用の教科書が説明する一方で、このことがほとんどの場合は実際には当てはまらないということが分かります。 (例外、つまりこの話が当てはまるのはゲインカーブが本質的に平らである場所においてですが、それはまた別の話です。) ゲインカーブの真中に位置しない縦モードは、ほんの少し本来の位置からずらされた周波数つまりゲインカーブの中心部に引き寄せられ、シフト全体から見ると最も遠くにある縦モードをも伴うことになります。これは「モードプリング(周波数引き寄せ)」と呼ばれるよく知られている効果で、それを裏付ける大いに発展した理論があります。 (モードプリングはレーザー固有のものではありません。例えば水晶発振器を外部コンデンサーを使って狭い範囲に調整することができますが、その機械的共鳴周波数は出力周波数とは異なります。)

数学は少し危険な面もありますが、モードプリングの 1 つの考え方はキャビティバンド幅には限りがあって主にミラーの反射率とキャビティ長に依存するということです。そのためもし正味のゲインがキャビティ共鳴と比較してゲインカーブの位置故に少し離れた位置でより大きいのであれば、発振線(モード)はその方向にシフトします。

レーザービームを DC 出力条件のほかに、非線形(二乗検波)装置のフォトダイオードなどの高速フォトディテクターでチェックすると、C/2L の倍数(しかしモードプリングのために正確ではありませんが)に近い主要な周波数差が発生し、さらに、C/2L と比べて(比較的)低い周波数で、周波数差の相違 (2 次相互変調積)も発生します。キャビティ長が変化して発振モードがゲインカーブ内を移動するにつれて、それぞれの縦モードに対するモードプリング効果はわずかばかり変化します。 ところが逆に、大きい数の間の少しの相違がこれらの2次ビート条件における劇的な変化に繋がって周波数が急速に上下動し、縦モードがゲインカーブの片側から消えもう一方から現れるという結果(モードスイープ)を生み出します。2 次ビートの強度は主要ビートの強度よりずっと低いでしょうが、スペクトルアナライザーで、場合によってはオーディオアンプでも検知可能です。

横河計測㈱製スペクトルアナライザー

HeNe レーザーの場合、2 次周波数の範囲は 1kHz~数百 kHz ですが、固体レーザーの場合その範囲は数MHz~数十、数百 MHz となります。ご留意いただきたいのは、0Hz からある程度の最小周波数までの範囲(例えば、HeNe レーザーの場合は1kHz かそこら)にはビート(うなり)は一般に存在せず、予想される通り、モードがゲインカーブの両側でほぼ対称となる時であり、非常に低い2次周波数がある場所であろうところでです。
明らかに自己モードロッキング効果が起きてこれらの縦モードをモード位置の狭い範囲に亘って正にゼロ周波数としてしまいます。この振る舞いは中ぐらいの出力(例えば 5mW)の HeNe レーザーのモードビート RF スペクトルで容易に観察できます。次の節を見てください。

これらの 2 次ビート(ビートのビート)周波数が存在するためには、レーザーは少なくとも3本の縦モードを同時に発振する能力を持つ必要があります。 (モードが 2 本だけだと、周波数差:ビートはただ一つとなります。) この HeNe レーザーでネオンのドップラー効果で広げられたゲインカーブは、632.8 nm にて約 1.5 GHzの半値全幅(FWHM)を示します。3 本のモードを得るには、それらのモードがそれぞれ約 500MHz 未満の間隔で互いに離れている必要があり、約 30cm 以上の C/2L チューブ長、つまり典型的な 5 mW 超出力(公称)のHeNe レーザーであることを暗示しています。そのレーザーはすべてのモードを同じ偏光方向に揃える必要があり、直交偏光は光検出器内で混合されません。典型的に隣接するモードが互いに直交して入れ替わる偏光を産み出すランダム偏光のレーザーでは、十分な同方向への偏光モードを確保するにはより長いチューブ長が必要となります。あるいはビーム偏光方向に対して 45 度の偏光子を付加することも可能(ただし、これは出力をフォトダイオードで 50%以上の減少をもたらすでしょう)です。

8mW 出力の直線偏光 HeNe レーザーの縦モード

この効果は中ぐらいの長さの HeNe レーザー、高速のフォトダイオードおよびオーディオアンプを使って実証できます。 まずレーザーを点灯し(チューブが)加熱されて急速にチューブが膨張してくるとスピーカーからカチカチとかポンポンまたはランダムではない規則的なノイズが聞こえ始めます。膨張の速度が低下するとよりくっきりとしたピーとか他の興味深い音が聞こえるでしょう。(雑音)交響曲の複雑さはチューブ長と結果的に発振しているモードの数に依ります。

モードプリングを見るいっそう正確な方法は高速フォトダイオードによって生成されるビート周波数をRF スペクトル分析装置を使ってモニターすることでしょう。C/2L 辺りの領域を拡張することによってモードスイープ中の変化はより明確となります。モードホップに対応する突然のシフトに加えて滑らかな動きも見られるでしょう。私は 1 つのレーザーではなく、2 つの同一の安定化 HeNe レーザーを互いにうならせることもやってみました。それぞれのレーザーからの 2 本のモードを用い、45 度偏光子をそれぞれのレーザーの前に置き、非偏光ビームスプリッターで結合すると 6 本ほどのビート(うなり)周波数を得られます。私は学生用にこの振る舞いの分析を課題として取っておくつもりです。この結果は最初少し戸惑いますが、少し考えると完ぺきな意味を持ちます。それぞれのレーザーの縦モードのモードプリングにだけ集中すると、片方のレーザーはロックされており、他方はモードスイープできて、500 kHz ほどのシフトを起こしていました。(引用元: RoithnerLasertechnik (office@roithner-laser.com).)

モードスイープ中の 5mW 出力 HeNre レーザーの縦モードの RF スペクトル。この6種の状態を繰り返す。

私達はシングルモード HeNe チューブを「聞く」ことができます:X 定格のフォトダイオードと AC パワーアンプを入手し、そのフォトダイオードに HeNe レーザービームのごく一部を導入し(ただし飽和はさせずに)、そしてスピーカーでウォーミングアップ中の「さえずり発振」を聞いてください。ヒント:チューブの中に鳥はいません。けれどもそんなふうに聞こえます!sin(x)/x のようです。

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