テクニカルノート

3光子顕微鏡による​深部​組織​イメージング

2021年 02月04日

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概論

2光子励起顕微鏡法を利用した場合、生体の観察可能な深さは、生体自体の内部散乱により制限される。濃く染色したマウスの脳を可視化するにあたって、観察深さが脳の表面から500μmを超えると、2光子吸収による励起子の閉じ込め(光導波路の形成)や信号-バックグラウンド比(SBR)は大幅に低下してしまう。この問題を解決するべく、2013年、米国コーネル大学のXu博士らにより、英国科学雑誌『 Nature Photonics 』にて 波長 1.3μm又は1.7μm付近の近赤外領域に励起光をシフトした3光子励起顕微鏡法(又は 3光子励起蛍光顕微鏡法 / 3PEF:3-photon excitation fluorescence imaging)の利用が報告された。この試みにより、光閉じ込め効果(3光子励起光電効果)が高められ、励起光源に近赤外光を用いることで生体内での光散乱が軽減でき、深部イメージング能力が飛躍的に向上した。3光子励起顕微鏡法を用いることで、生きたマウスの脳組織を脳表から1mmを超えた深部まで、細胞レベルの分解能でイメージングすることができる。さらに、3光子励起蛍光イメージングは、第3高調波発生(THG)とも容易に組み合わせることができ、神経細胞を形態学的にイメージングすることも可能である。( → 生体組織細胞の分子活性と形態情報の同時観察が可能になる)近年、この3光子励起顕微鏡法は、生体組織の深部観察に適した高強度・近赤外レーザー光源の開発が進むにつれて実用化されつつあるが、本研究では、さらなる有望かつ新たな応用展開の可能性を探求するが、当社が扱うCycle社のSoplanoが方式は異なるがこれに該当する。

2波長同時発振・3光子励起顕微鏡法

本研究では、フランス・パリの光学研究所大学院(Institut d’Optique Graduate School,1917年設立)の研究グループとの共同研究により、励起光源として、3光子励起に最適な2波長同時発振のレーザーを新たに設計、導入した。これにより、脳組織の深部観察に適した3光子顕微鏡システムを構築することに成功し、単量体緑色蛍光タンパク質(GFP)や単量体赤色蛍光タンパク質(RFP)、二量体赤色タンパク質(dTomato)のような励起波長の異なる蛍光色素を同時に励起させるだけでなく、非標識のTHG(第3次高調波発生)信号の検出もできる方法論を完成させた。さらに、3光子励起過程を用いて、生きているゼブラフィッシュの成魚の頭部における細胞活動の動的画像を取得することにも初めて成功した。

(a) 新型・2波長出力レーザー光源を用いた3光子顕微鏡の光学系

レーザー光源:波長1030nm励起(パルスエネルギー:40μJ、繰り返し周波数:1.25MHz)
スーパーコンティニウム光
パルス伸張器
1段目のOPA(光パラメトリック増幅器)出力光
2段目のOPA(光パラメトリック増幅器)出力光
パルス圧縮器
SHG(第2次高調波発生)
THG(第3次高調波発生)
GFP(緑色蛍光タンパク質)
RFP(赤色蛍光タンパク質)
Obj 対物レンズ
生体試料

(b) マウス脳組織内におけるex vivoイメージングによる深部到達性を2光子励起と3光子励起で比較した図

左図:2PEF(2光子励起蛍光顕微鏡法)600μmのz軸分解能
右図:3PEF(3光子励起蛍光顕微鏡法)600μmのz軸分解能

上記画像は
 CNRS(フランス国立科学研究所)
 Inserm(フランス国立保健医学研究所)
 École Polytechnique(エコール・ポリテクニーク:フランス公立高等教育・研究機関)
 IOGS(フランス光学研究所)
 Institut de la Vision(ビジョン研究所:フランス眼疾患研究所)
の各共同研究機関による提供

(c) ゼブラフィッシュ成魚の頭部における2つの神経細胞集団の3光子励起及びTHG(第3次高調波発生)によるin vivo同時イメージング


上記画像は
 CNRS (フランス国立科学研究所)
 Inserm (フランス国立保健医学研究所))
 École Polytechnique (エコール・ポリテクニーク:フランス公立高等教育・研究機関)
 IOGS (フランス光学研究所)
 Institut Pasteur (フランスパスツール研究所)
の各共同研究機関による提供

脚注

  • 本紀要に掲載された論文等の著作権は、
     CNRS (フランス国立科学研究所)
     Inserm (フランス国立保健医学研究所)
     École Polytechnique (エコール・ポリテクニーク:フランス公立高等教育・研究機関)
     IOGS (フランス光学研究所)
     Institut de la Vision (ビジョン研究所:フランス眼疾患研究所)
     Institut Pasteur (フランスパスツール研究所)
    に帰属する。

  • 引用元
    Khmaies Guesmi、Lamiae Abdeladim著(2018年)『Light:Science & Applications』誌(Nature Publishing Group
    出版)に掲載された論文より
    Springer Nature社 提供

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