テクニカルノート

④偏波面保存ファイバーへのファイバーカプリングとコリメーション

2021年 12月06日

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計測済みファイバーパラメーターが、最良のカプリング用およびコリメート用光学部品を選択する際にいかに有用であるか。

Anja Knigge, Mats Rahmel および Christian Knothe による


安定した計測設定は、計測を成功させる際の基本となります。(計測者の)フラストレーションとエラーの主要な原因は、継続的な不安定さに対して光学機構装置への再調整を継続して行わなければならないことにあります。ただし最初に決定すべきは、どのコンポーネントを採用するかということです。例えば有効開口数などのファイバーパラメータの詳細な計測によって、どのファイバー光学部品コンポーネントが目下のアプリケーションに適しているかを選択できるようになります。異なるパラメータに関する詳細な知識が選択にあたって重要となります。Schafter+Kirchhoff 社の新しいウェブサイト内のオンライン製品選択ページは、この情報を素早く容易に提供し、最も適切な選択まで絞り込む助けとなります。

標準的な自由空間ビーム設定と比較すると、ファイバー光学部品を使用することで安定性と便利さの両方を得られることが証明されております。これらのモジュール式で複雑な内蔵式の設定により、(ビームへの被爆可能性が下がるために)レーザーの安全性を高め、レーザー安全クラスの階級を低くすることができます。
レーザー光源と、計測設定を行うより敏感な環境の間に必要とされる定義されたインタフェース(光ファイバーや光学部品)は、物理的、機械的および熱的な分離を実現し、それぞれを原因とする弊害を相互に抑制します。

シングルモードファイバーとPM(偏波面保存)ファイバー

シングルモードファイバーは特殊なファイバーであり、光を横基本モード LP01 で伝播します。ファイバーから出射する光のフィールド分布(モードフィールド)は近ガウシアンです。標準的なシングルモードファイバーの場合、光は偏光の2つの原則状態(速い軸と遅い軸)に導入されます。ただし、ファイバーに欠陥があると、偏光の2つの原則状態にランダムに伝播され、偏光状態を維持できなくなります。

偏波面保存シングルモードファイバー(PM ファイバー)は組み込まれた応力要素のために非点対称となっており、2つの偏光原則状態(SOP)の縮退を解きます(2つの状態が現れます)。光をいわゆる「速い軸」あるいは「遅い軸」に導入し、これらの軸の片方に導入された直線偏光光が維持されます。シングルモードファイバーと PM ファイバーの特徴はそれらの開口数 NA とモードフィールド径(MFD)およびカットオフ波長 λ0にあります。このカットオフ波長よりも長い波長でのみ、導入光はシングルモードとしてファイバーに導入されますが、マルチモードとしては導入できず、ビームと強度分布はもはや安定もせず、ガウシアンでもありません。

MFD は波長依存し、ファイバー開口数に反比例します。 波長 1550 nm 前後の赤外領域で遠隔通信に使用されるファイバーの特徴はかなり大きなモードフィールド径である 10 μm ほどを持つことですが、典型的なシングルモードファイバーあるいは偏波面保存ファイバーでの紫外光の MDF の名目値は NA = 0.12 です。

名目 NA 対有効 NA

たいていのファイバーメーカーで入手できるファイバーにはいわゆる名目開口数(名目ファイバーNA)が付与されており、それはファイバーコアとクラッドの屈折率で定義されています。典型的なシングルモードファイバーや偏波面保存ファイバーの場合、名目値はNA=0.12 です。この NA 仕様が対応するガウシアン角分布は、1-5%レベルとなりますが、大抵の場合、それは計測値ではなく、この名目 NA 値は大きなバンド幅で設定されているか、NA 値を測定出来ないまたは不正確なレベルのものです。

大抵の場合 NA 値を前もって計測しますが、それは最終的に使用するファイバーで計測した数値ではありません。一部のメーカーは MFD を計測し、NA 値の再計算も可能となりますが、1つの波長だけの計測に過ぎません。この計測には通常、大きなエラー範囲が伴います。

ファイバーの開口数は、対応するファイバー光学部品の選択において決定的ですので、こうした大雑把な数値は、実際に計測された数値の補助に過ぎません。
1/e2 レベルで定義された有効ファイバー開口数を実際には使用することになります。ファイバーカプリングを目的とする場合、有効ファイバーNAe2 は、屈折率で定義された名目ファイバーNA よりも便利である理由は、ガウシアンビームも一般に 1/e2 径で定義されるからです。

Schafter+Kirchhoff 社は、ガウシアン角分布の 1/e2 レベルで採取されたファイバー出射の出力分布の拡がりに対応する有効ファイバーNAe2 を定義し、ファイバーの各製造バッチと多くの波長でこの数値を計測します。この数値こそ、特定有効開口数 NAe2 です。

例えばカットオフ波長 405nm での PM ファイバーの場合、ファイバーメーカーは、1-5%レベル範囲のどこかとして定義された名目上の NA 0.12 を提示してきます。この数値は、ほぼ 20%の不確実さを伴う 0.079~0.098 という有効 NAe2 に対応します。しかし、実測値が示すのは、405 nm での有効 NAe2 の計測値が実際には 0.070 ± 0.005 となり、ずっと正確な情報をもたらしてくれるということです。

こうした詳細な計測から分かることは、短い波長向けのファイバーの場合、開口数は波長で変化し、標準的なファイバーや長距離通信用ファイバーで想定されるような一定性を示しません。シングルモードファイバーおよび偏波面保存ファイバーの場合、有効 NAe2 は波長 λ の増加につれて一般的に減少します。この傾向故に、数多くの波長について NA を計測することが不可欠と言えます。NA あるいは MFD を一つの波長について計測したり設定を行う場合、波長由来の顕著な変化を完全に見落とすこととなります。

図1:400nm と 640nm間で使用可能な RGB ファイバーでの、有効開口数 NAe2 と対応する MFD。
NAe2 は波長の上昇に伴い際立って減少する。

有効 NAe2 の波長依存

有効 NAe2 が波長でどれほど変化するかを例示するため、その数値をブロードバンドの RGB ファイバーで計測し、(その波長範囲を)400nm と 640nm の間に限定します。図1が 400~640nm 間での NAe2 値の分布を示します。有効 NAe2 は波長の増加に伴って減少し、405nm (NAe2=0.092) と 635nm(NAe2=0.071)で大きく異る数値を持ちます。NAe2 と波長の間のほぼ直線的な関係は、計測値を推定することで示されます。有効 NAe2 に加えて MFD も示されています。MFD は、採取した NAe2 値を元に下記の公式でそれぞれの波長λ用に算出します(直接計測ではありません)。

2・λ MFD = π ⋅ NAe2

留意すべきさらに重要な点は、有効開口数の値はファイバーの製造バッチ毎に変化し、新しい使用法毎に再計測を継続的に行う必要があるということです。

各 Schafter+Kirchhoff 社製ファイバー毎の NAe2 曲線と他の有用な情報は、新しいファイバー製品選択ページを使って入手することができます。動作波長、ファイバータイプ(シングルモードファイバーか PM ファイバーか)、ファイバー仕様(例えば真空互換、900µm バッファか 3mm ケーブルか)およびファイバーコネクター(エンドキャップ、非磁性コネクター、FC あるいは他コネクターか)の選択に当たっては、製品選択ページが適切なファイバーを提示し、最重要な仕様に関する手短かな概要も示します。ファイバーを、比較機能を用いて比べることもできます。

適切なファイバーが見つかったら重要な情報をダウンロードし、例えばこのファイバーに導入するために最適なファイバーカプラーや、このファイバーから出射するビームを平行光化するのに最適なファイバーコリメーターなどの関連する光ファイバーコンポーネントを決定するベースとして使用できます。

ファイバーカプリング

シングルモードファイバーに導入する場合、レーザービームカプラーは回折限界スポットを生成してモードフィールド径とファイバーの開口数を適合させ、最大カプリング効率を達成する必要があります。この条件が満たされるときにのみ、最高 85%という高いカプリング効率でのファイバーカプリングを達成することができます。

適切な焦点距離を選択するには下式を用います。

f’= 0.5・Øbeam / NAe2

この式では、f’は最適の焦点距離を意味し、Øbeam は1/e2 レベルでのビーム径を意味し、NAe2 はカプリング波長λでの有効開口数を意味します。

名目ファイバーNA について、適切な焦点距離を求めるには、下式を用います。

f’ = FNA・Øbeam /NA

名目ファイバーNA は 1–5%レベルでのガウシアン角分布に対応しており、係数 FNA をその NA の異なる定義に訂正する必要があります。FNA は 1%で 0.76 、3%で 0.66、5%で 0.61 となります。

焦点距離を長過ぎにすると非効率となります。なぜならフォーカスしたレーザースポットはモードフィールド径よりも大きくなるからです。焦点距離を短くし過ぎると、フォーカスしたレーザースポットの収束角はファイバーの最大受容発散角よりも大きくなり、カプリング効率が減少します。焦点距離を最適にすると、それぞれおよその両方のファイバー両端でのフレネル反射 4%による損失を除き、理想的なガウシアンビームがほぼ完璧に導入できます。明確に言えることは、有効ファイバーNAe2 の正確な数値が最適な焦点距離の値に高い影響を与えるということです。

例えば、ビーム径 Φbeam が 0.72(1/e2 レベル)に対して波長 405nm で名目 NA が 0.12(1-5%レベルにて)の標準的なファイバーの場合、最適な焦点距離 f ’を算出すると、 f ’ = 3.7–4.6mm を得ます。このファイバー(NAe2=0.07)の有効開口数 NAe2 の実測値を用いると、最適な算出焦点距離は f ’=5.1mm を得ます。カプリング効率は、MFD とガウシアンスポットの重なりとして算出することができます。重なり 1 が意味するのは、ファイバー両端それぞれでのフレネル反射4%、像収差、迷光、ビーム歪(8%)および透過損失(1%)を除き、理想的なガウシアンビームをほぼ完全に導入できます(最大カプリング効率≈80 %)。 焦点距離 f’=5.1mm の光学部品を使用するとファイバーのMFD の重なりが 0.99 となり、焦点距離 f’=4mm の光学部品を使用すると重なりは 0.94 となり、次善の選択となります。留意すべきは、どちらの焦点距離の光学部品も入手出来ない場合、算出範囲には 4mm が最適となるということです。ファイバー開口数の不正確な名目値に基づく選択は、カプリング効率で 6%の減少に繋がります。もちろん、これらは理論的な考察です。実際には、光学部品の品質も重要な役割を果たします。

複数の波長を用いるアプリケーションでは、アクロマートかアポクロマートの光学部品を選択して 2種なり3種の波長を通す大きなカプリング効率を達成し、単一波長の場合は、非球面の光学部品が適切となります。PM(偏波面保存)ファイバーにカプリングする場合に留意すべきは、レーザー光源の偏光方向をファイバーの偏光軸に合わせる必要があるということです。この手順は[1]に詳述されています。

保証された安定性

レーザービームカプラーによるファイバーカプリングの高い安定性は、異なる焦点距離と波長による温度安定性テストで証明されます。テスト装置を図2に示します。組込済ファラデーアイソレーター付きの温度安定化レーザーダイオードビーム光源から出射された光は偏波面保存ファイバーを使ってテスト装置に導入され、レーザービームカプラーで平行光化され、次に2つ目のレーザービームカプラーで偏波面保存ファイバーに再度導入され、これら2つのビームカプラーは互いに 12 mm 離されています。

図2:15~35℃の間での連続した温度サイクルで2つのレーザービームカプラー(f=4.5mm, λ=405nm) の安定性を測るためのテスト装置。

再導入された後の出力を光検出器でモニターします。カプリング装置を温度制御板の上に設置し、その温度を 15~35℃の間で 1 分間に 0.5℃のレートで連続サイクルで変化させます。カプリングシステムの温度を、2つのレーザービームカプラーの片方に設置された温度センサーでモニターします。

計測装置に対するいかなる温度影響も最小化するため、レーザー光源、フォトディテクターおよびデータロガーのすべてを25℃の定温制御板上に設置します。

図3が示すのは、波長 405nm で焦点距離 4.5mm における5つの計測サイクルでの相対伝播出力の典型的な結果です。出力は、すべての計測サイクルに亘って取得された平均出力に対して標準化されております。

図3:相対出力(平均出力に関して正常化済)は温度(グラフ下部)に従って繰り返しパターンを示し、±1.5 %の最大の偏差を持つ。

平均出力からの出力偏差は±1.5%です。温度サイクルによる相対出力の繰り返しパターンがよりくっきりと図4に示されており、相対出力(最大値で正常化)がレーザービームカプラーの温度に対してプロット表示されています。

図4:相対出力カーブ(最大出力で正常化済み)はほぼ同期しており、温度サイクル中のビーム位置安定度の高い再現性を確認できる。
最大偏差はたったの3%。

最大カプリング効率は 25℃の少し上に達し、それは、高い方の温度よりも低い方の温度に向かってより速く減少し、要求されている動作温度 (25℃)近辺で最も緩やかなスロープを描きます。

それぞれの計測サイクルでの出力カーブはほぼ同期を示し、等しい温度における出力変動は<1 %となっており、温度サイクル中のビーム位置安定度とファイバーカプリングの長期安定性の再現性を実証しています。

ここでの最大出力の最大偏差は 3%です。

正しいコリメート用光学部品の選択

ファイバーコリメーターは、光ファイバーケーブルから出射する放射光を平行光化するように設計されています。それらはリバースモードでファイバー入射カプラーとしても使用できます。それらはシングルモードおよび偏波面保存ファイバーにも適応し、ガウシアン強度分布のコリメート(平行光化)ビームをもたらします。多くのアプリケーションでの正しいカプリング焦点距離を見つける場合、ファイバーコリメーターの最適の焦点距離は、特定のコリメートビーム径を得られるように選択する必要があります。特定のコリメート(平行光化)ビーム径 Φbeam (1/e2 レベルで定義)は下式で計算できます。

Øbeam = 2.f’.NAe2

ここでは f’がファイバーコリメーターの焦点距離であり、NAe2が有効ファイバー開口数を意味します。

ファイバーカプラーとコリメーター用のオンライン製品選択ページに、ファイバー情報や波長、 NA 、あるいは目的(カプリングかコリメートか)などの仕様を入力すると、適切なファイバーコリメーターやカプラーが表示されます。ファイバーの仕様を入力すると、対応するビーム径とレイリー長が計算されます。

特定のビーム径を必要とする場合、(ページ内の)スライダーを使って限度を調整し、使用可能なコリメーターの数多くの選択肢を狭めて最良の選択が可能となります。こうして選択を素早く容易に行うことができます。比較機能を使って重要な特徴を比較します。それぞれのファイバーコリメーター / カプラーについて、より深い情報とデータシートをダウンロードすることができます。

カプリング用光学部品の焦点距離については、ファイバー開口数の正確な数値が、特定のビーム径を達成するのに適切なコリメート用光学部品の決定に大きな影響を与えます。

例えば、1 mm のビーム径(1/e2 レベル)を得るためには、焦点距離は名目 NA 0.12(1-5%レベル)の場合、f’=5.1–6.3mm で計算しますが、405nm で実際に計測された数値 NAe2を用いると、焦点距離 f’=7.1mm を得ます。少し例示すると:焦点距離 f’=5.1mm と誤った選択をすると、ビーム径はたった0.71mm となってしまいます。

正しい焦点距離を別にしても、光学部品タイプを正しく選択することにも役割があります。球面収差に対する修正を必要とする単色光学部品は、難しい判断を要する選択か、あるいは単一波長アプリケーション用です。導入カプリングとは異なり、上質のコリメート(平行光化)されたビームプロファイルを提供できる非球面光学部品も、めったに選択されません。アクロマートはマルチ波長アプリケーションには判断が難しい選択となります。

結論

ファイバー光学部品が計測設定の安定性と便利さを飛躍的に増大させ、大きな定盤設置を、安定した小型の輸送可能な密封可能なファイバー光学部品システムで置き換えることを可能にします。どんなファイバー光学部品システムの安定性も、PM(偏波面保存)ファイバーへの入射・出射の両方で使用するレーザービームカプラーの長期安定性に強く依存します。温度サイクル中の出力安定性には 3%の典型的な最大偏差を示し、これを達成したのは、405nm で焦点距離 4.5mmに 15~35℃ の温度サイクルを加えたレーザービームカプラーのテスト装置です。

この高い安定性こそ、ファイバー光学部品装置の成功の基礎となります。有効ファイバー開口数 NAe2 の正確な計測が、光学部品に対する最も適切なカプリングと平行光化を選択する基礎を提供します。適切なファイバーを新しい Schafter+Kirchhoff 社ウェブサイト上のオンラインファイバー製品選択ページを使って選択することができ、ダウンロード用の NAe2曲線も入手できます。これらの数値を基本情報としてファイバーカプラーコリメーター製品選択ページに入力すると、検索を絞り込んで最も適切なカプラーやコリメーターを容易に選択することができます。

参照
[1] Schäfter+Kirchhoff GbmH: Polarization Analyzer for Fiber Optics and Free Beam Applications,
https://www.sukhamburg.com/support/technotes/fiberoptics/SK010PA/art_polarizationanalyzer.html

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