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触媒中間体の発生プロセスを、高速785nm近赤外・ラマン分光法で、キャッチする

2018年 10月18日

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「光の非弾性散乱」または、ラマン効果は、1928年にC.V.ラマンによって発見され、これにより彼は1930年にノーベル賞を受賞しました。しかし、材料や生命科学の応用から医療分野にわたってほぼ普遍的に応用可能な分析技術として、ラマン分光の可能性が注目されるようになったのは、わずかここ20年です。これは小型化したレーザー光源、高感度カメラ、高分解能をもつコンパクトな分光器を利用できるようになったことが主な理由です。

触媒活性化における過度種をキャッチ

量子効率が約40%から0%に下がった近赤外領域(800nm~1050nm)における検出器の欠点は、785nmラマン分光法の主な弱点です。通常、SN比を向上させるには、長時間の測定(露光)やスペクトルの平均化処理が必要ですが、しかしこの方法では時間分解能を大幅に低下させ(分単位)、数100ミリ秒だけしか存在しない化合物の微弱な信号を検出することはできません。裏面入射型CCDのような、より効果的な近赤外検出器を使用しても、エタロン効果の影響があり、それを押さえることができず、この問題を解決することはできません。この弱点から回避するためには、効果的な集光光学系と、何よりもレーザー光の光束を大きくする必要があります。安定動作が可能な高出力レーザー(試料に500mW 照射)や、試料の損傷を抑えつつ集光のための大きな共焦点容量が確保できれば、スペクトルごとの時間分解能を100ミリ秒レベルまで短くすることができます。

グラフは、H2O2の信号(黒)と、プレ触媒の中間体の信号(赤)の強度を表し、プレ触媒の中間体は、反応過程でたった約1秒存在しただけで、またH2O2の濃度は120秒以上かかって徐々に減衰している

例えば、プレ触媒を含む溶液にH2O2を加える酸化反応があります。この反応では、たった0.25mMのプレ触媒しかありませんが、これはラマン分光で検出するレベルをはるかに下回ります。しかし785nmで吸収があることから、そのスペクトルは共鳴的に強化されます。そこにH2O2が加えられて、最終的に250mMになりますが、時間をかけて徐々に減少します。
しかしながら、H2O2を加えた1秒以内に、プレ触媒は活性化し、その中間体が最大密度が0.05mMになったときに0.5秒のみ存在します。さらにプレ触媒の吸収バンドが、785nm近辺にあるため、その共鳴でラマンスペクトラムが約10000倍強化されました。
このことはSN比の高いスペクトラムが、200m秒感覚で記録できたことによってのみ観察することができたのです。

H2O2を加える直前、最中、直後のスペクトラムで、プレ触媒(黒)、触媒中間体(青)、H2O2(赤)を示す

ラマン分光のためのレーザー

ラマン分光に使用されている最もポピュラーな波長は785nmです。といいますのは、この波長は、ベストなバランスを与えてくれます。それは、蛍光の発光を避け、サンプルによるレーザー光の吸収があり、すなわちラマン散乱があり、したがって熱効果があり、検出器の感度での制限、などのバランスです。
しかしながら、波長の選択は、個々の応用に強く依存します。一般には、短い波長は、より頻繁に蛍光にします。しかし、ラマン散乱の強度は2次関数的に大きくなります。(強度は1/λ4に依存)。
逆に長い波長は、蛍光は少なくなりますが、信号が小さくなります。さらに、785nmは、シリコン検出器の感度の端に位置している。以前は、例えばもっと高価なInGaAsをベースにした検出器で、励起光も1064nmを使用していた。同時に近赤外領域は、水で光が吸収されることもあり、長い励起波長を使用する長所が少なかった。そのため、適切なレーザー励起波長の選択は、使用可能なラマンスペクトラムを集光するチャンスを伸ばすためには極めて重要です。

785nmで使用できるレーザーはダイオードレーザーです。しかしながら、狭ライン幅がラマン分光には重要です。<3 cm-1が、固体や液体の凝縮相で必要です。ガスではもっと狭いライン幅が必要です。

Cobolt社の08-NLDレーザーの典型的なスペクトラムで、FWHMは<40pm
出力は500mW

この狭さは、785nmダイオードレーザーの外部にVGR(Volume Bragg Grating)などの部品を付加して得られます。ライン幅は<40pm(<0.65cm-1)が得られ、レーザー出力は500mWです。

Cobolt社の08-NLDレーザーは温度を30℃以上変化させても、<20pmの安定性
右側はCobolt社の08-NLDレーザー

さらに、ラマンスペクトラムは、励起レーザーの波長に正確に依存しています。すなわち、ラマンスペクトラムは、波長分散スペクトラムとして記録され、その後ラマンシフトとして変換されます。(励起ラインからのΔcm-1)。そのため波長の安定性は極めて重要で、ラマンスペクトラムが測定の最中または各測定間で変化しないことです。

最後に、致命的な問題になりうる後方反射は避けなければならない。それは、光学アイソレーターとスペクトルクリーンアップフィルターを使用することで、ラマンスペクトラムと干渉するであろう、弱い付加的なラインを除去することで可能になります。
Cobolt社の08-NLDレーザーは、すべてのこの重要な特性を、コンパクトなフットプリントの中で実現し、その信頼性をHTcureという独自の製造方法によって保障しています。

結論

高速プロセスと低速プロレスを同時に取り込むことができ、高時間分解能と高SN比を得るために、高安定で高出力の近赤外レーザーの使用が極めて重要である。

著者:Dr.Duepen Unjaroen、Prof.Dr.Wesley R.Browne、Univ.of Groningen, オランダ
Dr.Elizabeth llly, Cobolt, スウェーデン

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